『豚の死なない日』~シェーカー教徒のつましく豊かなくらし

YA文学
1920年代のアメリカ、牧場の暮らしを描いた名作。
シェーカー教徒のつましくも豊かな暮らし。父と息子の物語。

豊かにくらすために必要なものはなんだろうか。

お金、というあなたの答えは間違ってはいない。知識、も必要だろう。

しかし、知識やお金だけで人生の豊かさははかれない。大切なのは、人生をどう受け止めるかという心にある。

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つましさの中にある豊かさ

1920年代、ベック一家はヴァーモントの牧場でつましい暮らしを送るシェーカー教徒だ。父は豚を殺す仕事をしている。12歳のロバートは町の学校に通いながら、牧場を手伝いながら少しづつ仕事を覚えている。

ロバートの暮らしは質素だが、エキサイティングでもある。なにしろ、道端で突然出産中の牝牛に出会うのだから。私だってかなりの田舎育ちだが、そんな場面には出くわしたことがない。当然、そんな時どうしたらいいのかわからない。

ロバートは、道端にいるその牛がお隣のタナーさんの牝牛であることに気づき、さらにその牝牛がいまにも仔牛を産み落とそうとしていることを知って、とっさにその出産を手助けする。産みの苦しみで動き回る牝牛の尻にしがみつき、仔牛を引きずり出そうとするのだから、蹴飛ばされ体中ボロボロ。さらに、のどを詰まらせ苦しんでいる牝牛ののどに腕を突っ込んで、腕に大けがを負うのだから、エキサイトなどと楽しんでいるどころではない。

ロバートの勇気ある行動は、二匹のかわいい仔牛の誕生と牝牛の甲状腺の腫瘍を取り出す。腕の傷と引き換えにロバートは、隣人のタナーさんからお礼にと仔豚を譲り受ける。

ロバートは仔豚に「ピンキー」と名付け、立派な母豚にするためそれはもう大切に世話をしてやる。愛情豊かに育てられたピンキーは、ラトランドの品評会でもブルーリボンももらい、ロバートの誇りとなる。やがてピンキーも年頃になるが、一向に発情期の兆候があらわれず・・・。

やがて、ロバートにとって辛いできごとが訪れる。それは生きる上で避けて通ることのできない”大地の掟”でもある。

「おまえしかいないんだ、ロバート。(中略)春がきたら、おまえはもう男の子じゃない。一人前の男になるんだ。十三歳の大人だ。りっぱな大人だ。」

これは、父のヘイヴンからロバートに向けての言葉。自分の人生を受け入れ、悲しみを乗り越えことで少年は大人へと成長していく。

自然にある仕事と信仰、つましい暮らしと忍耐、めぐる季節の中で父から大地のおきてを学び、大人へと成長する少年と見守る大人たちのあたたかさを感じる物語。

シェーカー教徒のくらし

『豚の死なない日』は1920年代、ヴァーモントでつつましく暮らす農場の息子ロバートの成長を描いた物語です。ロバートたちベック一家の生活を大きく支えているシェーカー教について少し調べてみました。
シェーカー教はキリスト教の一派で、アン・リーがクエーカーから創始し布教しました。
現在教団は消滅しましたが、近年、自給自足や手作業を中心としたシンプルでつましいライフスタイルが注目され、質素な美しさとと機能性あわせもつインテリアも人気だそうです。

楽天ショップさんより人気のシェーカーインテリアグッズをチョイスしてみました。

 

シェーカーインテリアを代表する”オーバルボックス”は、ハーブや小物をいれて収納。

 

背もたれが低いローバックのシェーカーチェア。

 

シェーカースタイルのペグボードです。帽子やコートをかけたり、ほうきなどの掃除用品をかけたりできます。

どうでしょうか?

現在人気のインテリアスタイルから当時の住まいや暮らしが少しイメージできたでしょうか。

シェーカーの暮らしは簡素なものを好むというだけでなく、”フリル”(なくても済むもの)を欲しがったり求めたりしないという徹底したものでした。

自分たちの土地を持たず、雇われ仕事をしながら生計を立てているベック一家。働きっぱなしの父の姿をロバートは「手の届かないこころにあって、絶対につかまえることのできないなにかを命がけで追い求めているようだ」と感じます。くらしに追われ「フリル」を持たない自分たちの生活にロバートは子どもらしい反発を覚えます。そんな息子に自分たちのくらしの豊かさを語るシーンは心に残る場面です。仕事で語る父とその背中をしっかりと見ている息子、この小説の中で父と息子ふたりの関係がとてもよく描かれています。

シャーカー教徒のシンプルさは、人生において本当に必要なものはそれほどたくさんないということと、本当の人生の豊かさとはどんなものなのか気づかせてくれます。

おすすめの本

『豚の死なない日』は三省堂語教科書3年生でもおすすめの本として紹介されています。

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