栗沢まり『15歳、ぬけがら』

栗沢まり『15歳、ぬけがら』 YA文学
中学生と大人に読んで欲しい本
いまもがいている人に
講談社児童文学新人賞佳作受賞
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ため息なんて、つくもんか。

麻美は中学3年生。
市営団地の中でも一番ぼろいと言われている団地に母とふたりで住んでいる。
母子家庭になってもしばらくは、それなりに生活してた。1年を過ぎたころから少しづつおかしくなった。養育費も届かなくなり、母は仕事を転々とするようになり、結局いはま仕事を辞めた。この春から心療内科に通いはじめた、このごろは、1日中ただ寝ていいる。たまに起きると文句を言って、ビールを飲んで、ときどきキレて、また寝る。
麻美にとって学校はサイテイだけど、給食があるのが唯一の支え。
夏休みのあいだ、お昼ご飯をどうしたらいいのか、麻美の明日からの悩みだ。
同じ団地に住む翔は「まなび~」に誘われる。
「まなび~」はひとり親や生活保護家庭の中学生に勉強を教えてくれる「学習支援塾」で、昼ごはんとおやつも出してくれるらしいが、麻美は行く気がない。
スーパーの試食コーナーをまわり、ただでもらえるパンの耳で空腹をしのぎ、公園のトイレの水道で顔を洗う。
卒業してからの進路に不安を抱きながらも、みないふりをする。
考えてもどうすることもできないと思っているから。
夏休み、居場所のない麻美は夜のアーケード街へ向かう。
ここにいればだれかがいてくれる。
一緒にいればひとりじゃない。でもみんなと同じように万引きしたり自分を売ることなんてできない。
母さんが茶色の紙袋を揺らしてる。
ものすごく久しぶりのハンバーガー。ポテトもある。ドリンクも。つばが出てきて、ガツガツ食べて、ゴクゴク飲んだ。
「そんなにあわてて食べなくても」
母さんは疲れた声で、でも、笑ってた。さびしそうに笑って、ビールをゴクリゴクリとのどに流しこんでいる。
母さんはどうやってこのお金を作ったんだろう。
想像したら、のどが詰まった。食べつづけることを拒否することも考えたけど、いいにおいと食欲に負けた。なにも考えないことにして、久々の味を楽しむ。
すべてを味わいおえたあと、どうしようもなく苦しくなった。ゴミ袋と包み紙が、あたしに問いかけてくる。
おまえは何者だ。なんで、平気で食べられるんだ。
そしてまた、そう思うそばから別の自分が否定する。
考えるな。考えたら生きていけなくなるぞ。
――本文より
どうにかしたいけれど、どうにもできない現実から目をそらし、だれにも助けを求められないまま、麻美はもがいていた。
ある雨の朝、母と喧嘩になった麻美は、団地から飛び出していく翔を見つけ走り出した。翔の背中を追いかけて、ずぶ濡れのまま飛び込んだ先は「まなび~」だった。
15歳がたったひとりでできることは限界がある。
けれど変わりたいという強い思いで自分から行動できれば、変えられる現実もある。

受賞歴など

第57回講談社児童文学新人賞佳作受賞
著者は、公立中学校で国語教諭として勤務後、塾講師、学習支援アドバイザーなどを経験。『15歳、ぬけがら』がデビュー作です。今後の活躍が楽しみな作家さん。

だれもが「助けて」と声をあげやすい環境づくりは行政の仕事。
「助けて欲しい」と言われたときにすぐに手を差し伸べられる心構えはいつも持っていたい。

中学生はもちろん、多くの大人にも読んで欲しい1冊。

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