- 小学校高学年から中学生・男の子にもおすすめ
- 知り合いから友だちまでの微妙な距離感をさっぱりと描く
- 第11回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞
友だちまでの微妙な距離
はじめはただの「知り合い」だったのに、いつから「友だち」になるんだろう。
鈴山ハルは高校一年生。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんと賑やかに暮らしている。ボサボサあたまにズボンをずり下げて「だらしない」なんて言われるけど、ごく普通の男子高校生だ。
電車で通うハルに、駅でやたらと話しかけてくるやつがいる。
名前は淀川清。
同じ高校に通う、同じ中学出身のちょっと変わったクラスメイト。
中三の終わり転校してきて、あまり学校に来なかったから、ほとんど話したことはない。
それなのに、高校に入学してからは通学路でことあるごとに話しかけて、後ろをついてくるあいつ。
「ハルくん、制服のそでのボタンがとれてますよ!」
「ハルくん、電車は、中の人が降りてから乗るんですよ」
そして最後には「フツウそうでしょう」とくる。
二メートル後ろの距離を保ち、お説教してくるアイツはどこか腹立たしいが、そんなハルの気持ちを知っては知らずか、アイツは歩調を合わせてついてくる。
一緒に帰るつもりなんてないのに、同じ方向だからと並んで歩きながらふたりの距離は近づいたり遠のいたり。
言い返してやりたいが、返す言葉も見つからず、だんまりするとその距離は少し伸びる。
聞いていないふりをしながら気づくと、話に耳を傾けていて、そんな時ふたりの距離は少し近くなる。
知り合いから友だちになるふたりの距離感。
二メートル。
話し声は聞こえても、手を伸ばすには足りない。
そこからちょっと近づいたり離れたり、三歩進んで二歩下がるをくり返して少しずつ近くなっていく。
つかみどころのない男子高校生の距離感と関係が妙にくせになる。
レビュー
著者のデビュー作です。
男子高校生を主人公にした物語ですが、ページ数少なめでさっくり読みやすいので、小学校高学年から中学生に、男子にもおすすめです。あまり小説は読まない人にも読みやすい。
高畠那生さんのイラストも、ストーリーとマッチしていい味出してます。
ブックデータ
受賞歴など
第11回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞