重松清『青い鳥』~先生は大切なことしか言わない

  • うまく話せない先生と学校にうまくなじめない生徒たちの物語
  • 学校・ともだちの連作短編
  • 泣ける本

先生は大切なことしか言わない

突然ですがクイズです。

「教室の黒板は、東西南北どちらにあるでしょうか?」

知ってる?

日本中どこの学校でも、黒板は同じ方向を向いています。法律で決まってるんだって。

それってちょっと笑っちゃう、って思うあなたにはきっとこの本が向いているかもしれない。

村内先生は特別な先生。

国語の先生だが、言葉がつっかえてうまくしゃべれない。それもけつまづいた程度じゃなくて、その場に転んでしまったような激しいつっかえ方だった。特に「カ」行と「タ」行はひどい。

なのにどうして国語の先生をしているんだろう、とみんな思う。

あやちゃんは「思う」だけでなく、みんなの前で責め立てるように先生に直接質問したりする。

その答えは、先生にもわからない。

村内先生は、中学校の非常勤講師をしている。うまく話せない先生は、必要な子のところにだけやってくる。

教室で言葉が出せなくなったわたし。

先生にナイフを向けてしまったぼく。

いじめられていたひとりの生徒の自殺未遂で加害者となったクラス。

父の自殺の苦しみをひとりで抱える少年。

みんなの中に自分の居場所がうまく見つけられないとしても、ひとりじゃない。

「いじめはひとを嫌うからいじめになるんじゃない。

人数がたくさんいるからいじめになるんじゃない。

ひとを、踏みにじって苦しめようとしたり、苦しめてることに気づかずに、苦しくて叫んでるこっちの声を聞こうとしないのがいじめなんだ」

学校の中でひとりでたたかっている子どもたちに届けたい8つの物語。

冒頭の黒板のクイズの答えは、物語の中にあります。気になる人は読んでみてね。

日本中の中学生が同じ時間、同じ方向を向いて座っている場面を想像すると、思わず吹き出しそうになる。みんなと同じ方向を向いているのが苦しいと感じる時もある。そんな時は、好きな方向を向いて深呼吸をしてみて。

学校の中でひとりでたたかっている子どもたちに届けたい8つの物語。

わたしはいつも泣いちゃうので、朝読書にはおすすめしません。ひとりでこっそり読むことを推奨します。

映画『青い鳥』

2008年劇場公開

【監督】中西健二【出演】阿部寛、本郷奏多、伊藤歩

第21回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」に出品

いじめにあっていたという遺書を書き、野口が自殺未遂をした。新学期の初日、クラスにやってきたのは吃音でうまく話せない村井先生はだった。

村井先生は転校した野口の机を教室に戻し、いないはずの野口の机に毎朝「おはよう」と声をかける。

思いがけずにいじめの加害者のひとりとなってしまったことに苦しむぼく。

学校の生徒会では、いじめに苦しむ生徒のための投書箱『青い鳥BOX』が設置されるが・・・。

本作の中から短編「青い鳥」を原作に映画化しています。

本をチェックする

文庫: 437ページ
出版社: 新潮社 (2010/6/29)
発売日: 2010/6/29

【もくじ】
ハンカチ/ひむりーる独唱/おまもり/青い鳥/静かな楽隊/拝啓ねずみ大王さま/進路は北へ/カッコウの卵

物語の中にも登場する『青い鳥』、村内先生の好きな草野心平の詩集もあわせてどうぞ。

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。
出版社勤務を経て、1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。学校を舞台に10代の心情を描いた小説も多く、多くの作品が映画化やドラマ化されベストセラーを生み出している。国語入試問題によく出典される作家としても、10代にお薦めしたい作家。
【主な受賞歴】
『ナイフ』坪田丈二郎文学賞受賞
『エイジ』山本周五郎賞受賞
『ビタミンF』直木賞
『十字架』吉川英治文学賞