篠田節子『ブラックボックス』

ブラックボックス 小説文学
農業・食べることに興味がある人に
食問題に取り組むミステリーです
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あなたの食事は安全ですか?


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あなたは、自分が食べている食べ物がどこでどのようにして食卓に運ばれてきたものか知っていますか?スーパーで売られている食材はどこで誰によって作られたものなのか、正確に知ることは実は難しい。

さっき食べた食材は果たして安全と言えるだろうか。なにを根拠に?

この本を読んだ後では、すべてを疑ってしまう。

篠田節子の『ブラックボックス』は食べ物の安全性について考えさせられるミステリー。

人工光を利用したハイテク設備、完全管理化されて作られた野菜を、完全無菌の工場でサラダに加工する。このサラダがコーヒーショップやスーパーで流通する。安心で安全なはずなのだが、このサラダを毎日食している研修生と呼ばれる外国人労働者や、学校給食を食る子どもたちに次々と体調不良が起こりはじめる。

野菜を生産する剛、サラダ工場で働く栄美、学校栄養士の聖子、3人の異なる目線から浮かび上がる、食の安全を脅かすサスペンス小説。

登場人物たちは、社会の酸いも甘いも渡り泳いできたアラフォー。自分を守ることには必死だが、厄介ごとに足を引っ張られるつもりはない。どこか突き放されたような語りに共感できないのに、食と経済を取り上げた作品のテーマと、真犯人(ここでは原因とか真実)がつかめそうでつかめない展開に、ぐんぐんと引き込まれて、次々とページをめくらずにいられない。

管理される野菜たち

LEDライトと養液で出来上がる野菜や果物は「自然の産物」といえるのだろうか。生産者である剛が「製品」と呼ぶように、それは人工物である。そして、彼ら生産者は、自分たちが食べる野菜は昔ながらの方法で栽培しているのよね。この事実が、何を信頼すべきかを一番正確に語っていると思う。


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自然に生まれ、自然の中に生きる私たちのエネルギーはやはり「自然の産物」でなければならない。自然の中であるがままに栽培された野菜の収穫を手伝う栄美がこんなセリフをいうシーンがある。

「自然って、無駄と緩みとスキだらけじゃない」

どれも経済成長にとってはネックとなる要素であるが、私たち人間が自然の産物であるなら、これらの要素は必要不可欠なものなのなのだと肝に銘じて、だらだらする自分を正当化したいと思う(笑)

宮崎駿も言っているではないか。
「人間は土からはなれては生きていけないのよ」と。
これはシータのセリフ。

管理される自然など存在し得ない。それは野菜や果物といった植物に限らず、私たちもまた同じであるという警鐘にも思える。

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