松谷みよこ『ふたりのイーダ』~帰りを待つイス

松谷みよこ『ふたりのイーダ』
  • 小学校高学年から読める
  • 戦争や平和について考える物語

だれかの帰りを待つイス

おばあちゃんの家で過ごすことになった夏。直樹は、荒れ果てた家の中で「イナイ、イナイ…」と言いながらコトリコトリと歩き回っているイスを見つけた。「イーダちゃん」をさがしているというそのイスは、直樹の妹のゆう子を見て、「イーダちゃんが帰って来た」と喜んで言うが…。
小さなイスが歩きまわっておはなしをする。かわいらしいファンタジーのようだが、イーダちゃんをひらすらに待つイスの姿は執拗にも感じられ、その思いは悲しく、こわいとすら感じる。
イスが探している「イーダちゃん」はいまどこにいるのか?
なぜ、その家は直前まで暮らしていたようなまま、だれもいなくなってしまったのか。
追うほどに謎めいていくが、直樹はそれまで全く知らなかった過去にぶつかることになる。

突然に日常を奪われるのは亡くなった人たちばかりではなく、残された方にこそその想いは強く残るのだと思う。ずっとイーダちゃんを待ち続けるイスのように。
イスの語りがカタカナなので少し読みづらいかもしれませんが、挑戦してみてください。

青い鳥文庫からも出版されています。こちらの表紙のイメージで子どもたちが手にしづらいのが、ちょっと残念ですが。最初に紹介した松谷みよこ全集の表紙がかわいらしくて好きなので、こちらを紹介させていただきました。

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