新津きよみ『ふたたびの加奈子』

ふたたびの加奈子 小説文学
家族を描くミステリー
輪廻転生・生まれ変わりがテーマ
人って死んだら生まれ変われるのでしょうか。
たとえばそれが、あなたにとって大切な人だったら、やっぱり、どうあっても戻ってきて欲しいと思うでしょうか。
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あなたは生まれ変わりを信じますか

交通事故で死んだはずの5歳の娘加奈子のたましいと暮らす夫婦。
でもその姿は、妻の容子にしか見えない。
そして姿と言っても、容子曰く、空気のかたまりのようなもの。
見えない魂に「マル子」と名付けて、ロールキャベツを食べさせたり、一緒にデパートに出かける容子。半信半疑の夫は、いつまでも事故を引きずり先に進めない妻に不安と戸惑いを感じずにいられない。←そりゃ当然

妻と夫と見えない娘・加奈子、奇妙な三人の生活が続いていく…というと、まるで東野圭吾の「秘密」のようだが、これは物語のはじまり。

ある日「マル子」は容子の元を離れて、外へ出て行ってしまう。後をつけた容子は、「マル子」がある妊婦についていくこところを突き止める。それは、新しい命への転生の始まりだった。

どこか突拍子もない話でもあるのに、母親として加奈子を取り戻したい容子の思いに共感するし、きっと傷つくのだろうとわかっているから「そのへんにしておきなさいな」と止めたくもなる。

生まれ変わった加奈子に用意周到に近づく容子の姿には、「八日目の蝉」のような痛さとスリルもあって、ページをめくる手が止まらない。

容子の狙い通りに物語は進んでいくのだが、ラストで意外な真実が浮き上がる。


画像リンク:苗木部 by 花ひろばオンラインさん

思わず「うっそ~」と言っちゃうサスペンス的な展開。

その一方で、どこか落ちついた容子の母らしさに心をとらえられた。彼女の強さや柔軟さのようなもの。それが、この小説に光を挿している。わたしも母だからそう読めたのかもしれないけれど。

ファンタジックなストーリーの中にあったのは、失ったはずのものを失ってはいなかった喜びと、一方で、手にしたはずのものが確かな存在ではないという虚しさ。

生きるって、なにかを手にしてはなにかを失うことの繰り返しで、だれもが避けられないことなのだと思い知らされる。

映画「桜、ふたたびの加奈子」原作


2013年「桜、ふたたびの加奈子」のタイトルで映画化。

栗村実・監督。主演は、広末涼子、稲垣吾郎。2014年にゴーストライター問題が起こった佐村河内守さんが音楽担当だったようです。

映画もよかったですが、原作の方が容子の心の揺れに近くてよかった。

*本をチェックする*

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