高木敏子『ガラスのうさぎ』

高木敏子『ガラスのうさぎ』
高学年・中学生に読んで欲しい本
戦争と平和について考えるノンフィクション
読書感想文にもおすすめです

1945年、終戦の年。敏子は12歳、小学6年生でした。

戦争が始まる前、敏子の家は両国の町でガラス工芸品をつくる工場を経営していました。戦争がはじまり、軍の命令で注射器など治療用器具の製造工場となります。

1945年3月10日、東京を大きな空襲が襲いました。

この時、疎開で空襲をまぬがれた敏子でしたが、数日後、二宮にやってきたお父さんから東京のひどい状況を聞きます。

東京はまるっきり焼け野原になってしまったこと。

死体が山のように積みあがっていること。

母とふたりの妹が見つからないこと・・・。

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ガラスが溶けるほどの劫火

7月に入りやっと東京を訪れることができた敏子は上野まで見渡せるほどの何もない景色に呆然となりました。家の焼け跡を掘り起こすと、溶けたガラスのうさぎが現れます。それは床の間にあった大きなガラスのうさぎの置き物で、半分以上溶けてぐにゃぐにゃになっていました。

「ガラスがこんなに溶けてしまうのだからなー」

そういうお父さんの言葉が、胸にぐっときます。

ガラスの置き物がこんなにもとけてしまうほどの熱さだったのです。

その後、新潟で新しい工場を再開するというお父さんと、一緒にくらすことになった敏子でしたが、出発の日、ふたりは二宮の駅で再び空襲に遭い・・・。

震災が生んだ孤児たち

1945年3月10日、東京を襲った大空襲は、一夜にして10万人以上が命を失いました。一度の空襲での犠牲者数としては世界史上最大だそうです。

米軍機B29による焼夷弾爆撃に襲われた東京の町は、木造家屋が密集していたこともあり、あっという間に火の海と化したといいます。東京35区の3分の1以上の面積にあたる約41平方キロメートルが焼失しました。

敏子の母とふたりの妹も最後まで遺体が見つかることはありませんでしたが、この空襲で亡くなったのでしょう。

東京大空襲は、東京に親を失った子どもたちをたくさん生み出しました。戦争孤児です。

ジブリ映画の原作にもなっている野坂昭如さんの『火垂るの墓』も震災孤児を描いた作品です。

13歳の敏子はたったひとりで手続きをして、お父さんの火葬をします。お父さんもお母さんも亡くし、家も焼かれてしまって帰る家もない。途方にくれる敏子ですが、その後、戦争が終わりを告げ、お兄さんが戻ってきました。どれほど心強かったことでしょう。

親も家もない敏子は、遠い親戚の家にお世話になりながら生活しなければなりませんでした。敏子はここで、肩身の狭い思いやみじめさを味わいます。

わたしが心を打たれたのは、敏子が駅前で靴磨きをしている子どもたちを見かけた時のシーンです。

もし兄が復員してこなかったら、わたしもきっと――。あの兄妹たちがかわいそうだと思っても、わたしはなにもしてあげられない――。妹たちは、死んでしまって案外しあわせだったかもしれない。もし、わたしと妹たちだけが生きのこっていたのだったら――。

両親が必死に守ってくれた命を大切に一生懸命生きよう、と誓う少女の逞しさが胸に迫ります。

おすすめポイント

『ガラスのうさぎ』は1977年に出版され、その後2000年に語句説明の注釈やルビを増やし新版が出版されました。小・中学生には単行本の新版が読みやすいかもしれません。

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高木敏子『ラストメッセージ ガラスのうさぎとともに生きて』が2015年玉川聖学院中等部の国語入試問題に出典されています。

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