乙一による本格ミステリ大賞受賞作『GOTH リストカット事件』

乙一『GOTH』 小説文学
怖い本が好きな人におすすめ高校生が主人公のミステリー
第3回本格ミステリ大賞受賞
映画「GOTH」原作
スポンサーリンク

森野夜と僕の出会い

【もくじ】

暗黒系/リストカット事件/犬/記憶/土/声

 

世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、僕は、自分は殺す側だと思う。。

ぼくと森野は、クラスの群れの中でどこか浮いている。森野は、黒い色のものばかり身に付け、たとえばロシアで五十二人の女性や子供を殺害した本を楽しそうに読むような女の子なのだ。ぼくはといえば、話しかけられればそれなりに笑顔で答えるスキルを身に付けているが、心の奥では笑ってなどいないことを森野夜だけは見抜かれているらしい。

夏休みの出校日。ひさびさに会った森野夜は、ぼくに1冊の手帳を差し出した。拾ったという茶色に合皮の手帳の中には、世間を騒がせている連続殺人事件の被害者である女の子たちの名前と殺人の詳細が記されていた。

そんな僕と森野がこんな手帳を拾って、そのまま警察に届けたりなんかするはずもない。ぼくたちは、まだ発見されていない被害者の死体を見に行くことにした…。

手首を切り落とし持ち去るというリストカット事件、動物虐待事件など町で起こる不気味で奇妙な事件をふたりが追いかける←決して解決が目的ではない。

ぞわっとする新感覚のミステリー。

「犬」、森野夜と妹・夕との過去を描いた「記憶」が好みです。

本格ミステリー大賞受賞作!

このシリーズの1作目である「暗黒系」は、角川スニーカー文庫の『ミステリアンソロジー・殺人鬼の放課後』に収録する予定で当初書かれた作品でしたが、思いのほかよくできたので、続編短編と合わせてひとつの作品「GOTH」として発表されました。

それまでライトノベル作家のイメージが強かった乙一さんですが、「GOTH」はミステリー小説として単行本で出版されました。これまで乙一さんを知らなかった多くの読者に名前が知られるきっかけとなった作品でもあります。

ごく普通に見える高校生の僕と森野夜が、人間のもつ闇に惹かれ猟奇的な事件に自ら巻き込まれていく。そして彼らは、冷酷ともいえる事件を興味本位に淡々と傍観しているのです。

一般的にミステリーと言えば、「謎解き」がメイン。

ガリレオシリーズのガリレオこと湯川先生だって、ディナーの後でお嬢様にひとことモノ申したい執事だって、彼らは「謎解き」を楽しんでいるのです。

東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』~事件の謎を解くカギは執事!
2011年本屋大賞受賞!お嬢様刑事と執事のコンビが謎を解く、ユーモアたっぷり6つの事件。

『GOTH』の主人公である僕は、ここがちょっと違う。

僕は謎解きをしたいわけではなく、事件の深層にある人間の闇や「死」そのものに興味があるだけ。事件に関わる人が死に追い込まれるようなことがあるとしても、それを「助けよう」などとは思わない。そんな冷たすぎる「僕」ですが、物語がすすむにつれて森野への感情が少しづつ人間味が出てくるのも面白いです。

こうして謎解きを斜めの視点から描き、新しい読者層を開拓した乙一さんの『GOTH』は、第3回本格ミステリ大賞を受賞します。

本格ミステリーとは、謎解き、トリック、頭脳派名探偵の活躍などをメインとする推理小説のこと。本格ミステリー大賞は、2001年に本格ミステリ作家クラブにより創設されたミステリ文学賞です。

これまでに大賞を受賞した作家には、倉知淳、山田正紀、歌野昌午、東野圭吾さんなど有名ミステリー作家が勢ぞろい。

先ほど登場した湯川博士も「容疑者x」の謎を解き明かし、2006年第6回の本格ミステリ大賞を受賞!あの謎解き執事は2011年の第11回候補作に選ばれています。

本格ミステリ大賞候補作なら、綾辻行人さんの『Another』(2010年第10回)もおすすめ。

ちなみに、当初掲載予定だったミステリアンソロジーには代わりに『seven rooms』を書下ろし。こちらは『失はれる物語』『ZOO』にも収録されています。

映画原作

2008年劇場公開された。「暗黒系」「記憶」をベースとしたオリジナルストーリー。
監督:高橋玄
出演:本郷奏多、高梨臨

アメリカでも映画化の話が出ているとかいないとか…。楽しみですね( *´艸`)

文庫本は上下巻です。

著者・乙一とは

1978年10月21日生まれ。福岡県出身。

1996年、17歳の時に『夏と花火と私の死体』が第6回ジャンプ小説大賞を受賞し、デビュー。ライトノベル系の小説が多いが、『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞するなどミステリー作家としても活躍。

乙一とは別の名前でも小説を発表していますよ。よかったら探してみてね。

BOOKS雨だれのおすすめ乙一さんはこちら。

作家・乙一の絶対に読みたいおすすめ本8冊!
ミステリー、ホラー、青春小説…謎めいたストーリーと驚きの展開で読者を物語に惹きつける魅力的な作家・乙一ファンの私が選ぶ、10代にぜひ読んで欲しいおすすめを紹介!

おすすめの本

怖い本が読みたい!中学生・高校生におすすめのホラーミステリー小説
人間にとって「恐怖」を感じることは自分の「生存」を確認する行為でもある。「死」を恐れる感情が人を「生」へと向かわせる。怖い本が読みたい中学生・高校生におすすめのホラーミステリー小説。

コメント