『本からはじまる物語』~本好きなら絶対気に入る短編アンソロジー

  • 本好き必読!本をテーマにした18人の豪華作家陣による短編アンソロジー
  • 朝読書や通学・通勤におすすめ

本好きならきっと気に入る短編アンソロジー。

(株)トーハン発行『出版フォーラム』の連載「本からはじまる物語」(2005年1月号~2007年12月号)に掲載されていたものを1冊にまとめました。「本」をテーマにしたショートショートで、どれも10ページほどの短いものばかり。朝読書やすきま時間のふらり読みにもおすすめです。

「好き」な作家さんや「読んでみたかった」作家さんばかり。中には、好みではなさそう~だけど、読んでみたらおもしろかったって作家さんもいたりして、いろんな作家さんをちょこっとずつ味わえるチョコレートボックスのような1冊。(だからアンソロジーって好き)

本好きな私は、するりとひきこまれてしまいました。同じテーマでも、作品のカラーはそれぞれ個性がうかがえる、味わいの異なる作品ばかり。このへんは、さすが荒波を超えてトップを走っている作家さんならではの実力!!

恩田さんの「飛び出す絵本」にはじまり、三崎さんの「The Book Day」に終わる。このふたつの作品、別の作家さんの違う作品のはずなのに、どこかリンクしていて、1冊の本のはじまりと終わりにぴったりとおさまる心地よさ。三崎さんは狙って書き上げたのだろうかと思うほど。最後まで読み終えて、「あぁ、やっぱりね。そうじゃなくっちゃ」と、満ち足りたところにすとんとおろされたような充実感。

恋愛ドラマのように、別れた恋人たちが回り道してやっぱり結ばれた時のような、あの感じ。「本」をテーマに描かれた18のばらばらの短編が、この本丸ごと1冊はじめからおわりまでもが1つの読み物でもあるようにするりと読めます。

本好き必読!18人の豪華作家陣

* もくじ*
恩田 陸 「飛び出す、絵本」
本多孝好 「十一月の約束」
今江祥智 「招き猫異譚」
二階堂黎人「白ヒゲの紳士」
阿刀田高 「本屋の魔法使い」
いしいしんじ「サラマンダー」
柴崎友香  「世界の片隅で」
朱川湊人  「読書家ロップ」
篠田節子  「バックヤード」
山本一力  「閻魔堂の虹」
大道珠貴  「気が向いたらおいでね」
市川拓司  「さよならのかわりに」
山崎洋子  「メッセージ」
有栖川有栖 「迷宮書店」
梨木香歩  「本棚にならぶ」
石田衣良  「23時のブックストア」
内海隆一郎 「生きてきた証に」
三崎亜記  「The Book Day」

すごく豪華な作家陣でしょ。

私のお気に入りベスト3

ネタバレにならないようにさっくりと。

有栖川有栖「迷宮書店」

ヤラレタ~と思ったのは、有栖川有栖さんの「迷宮書店」。宮沢賢治のあの名作をモチーフにしています。森の中で迷子になった2人の紳士が、レストランならぬ本屋さんを見つけるという、私も大好きな原作。どんなオチが待っているの~。

内海隆一郎「生きてきた証に」

内海隆一郎さんの「生きてきた証に」なんかも、ザ・本!!って感じの裏切らなさがよい。加藤さんの経営する書店の本棚に、このところ手作りの本が差し込まれている。五十ページそこそこで、本というより文集といった感じのそれは、表紙に『生きてきた証に』と毛筆体で記されてある。

山本一力さん「閻魔堂の虹」

はじめましての山本一力さん「閻魔堂の虹」は、時代もの。貸本屋・閻魔堂(えんまどう)の店番・弥太郎とお客の女中との淡い(?)恋心のからむおはなし。どんな物語になるのかな?と期待しつつ、おもしろくまとまっていて、山本さんのカラーが見えるような。

興味深かったのは、猫の出てくる作品がいくつかあったところ。「吾輩は猫である」にも代表されるように、猫と文学は相性がいいのかしら?先の閻魔堂にもねこが出てくるんだよね。

猫の出てくるおはなしは、どこかユーモラスでつかみどころがないものが多い。猫の中でも、お気に入りは「読書家ロップ」。ぼくが古本屋でから00円で買ってきたロシア語の本を、猫のロップは気に入ったようで、くんくん匂いを嗅いだり表紙をねこパンチ。まるで開けと言ってるみたいに。ぼくが本を開いてやると、しきりに首を動かし、まるで本を読んでいるみたいなんだけれど…。さてロップの読んでいる本はいったいどんな本なんでしょう。

うさぎは本を見たらかじってしまうけれど、ねこはきちんと本を読めるのね。感心です。

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