- アメリカ史を学ぶノンフィクション
- 歴史が好きな人・ミステリーが好きな人におすすめ
歴史は勝者がつくるもの?
「歴史は勝者がつくる」という言葉を知っているだろうか。
勝ち残ったものが、自らを正当化した歴史を作ることができる。
「死人に口なし」という言葉もあるように、敗者は歴史から負われる身となり、彼らの歴史はすべて消失される。だから「歴史」として声を残せるのは勝者の特権となる。時が経過するほどに、真実をさがす手掛かりは少なくなり、長く語り残された記録が「歴史」と呼ばれるようになる。
歴史の教科書によると、世界ではこれまでに無数の戦いが繰り広げられてきた。わたしたちの歴史は戦いの歴史だ。少し飛躍した言い方になるが、古い歴史の多くは戦いに勝利した者たちの雄叫びとも言える。
歴史学者でもなんでもないごく普通の一般人には、与えられた歴史の真実を確かめるすべがない。だからわたしも含めて多くの人びとは、歴史の教科書に書かれている内容をそのまま受け入れるしかない。だって、テストにもそのまま出るんだもん。覚えるしかないでしょ。
それが正しい歴史かどうかなんて関係ない。
でもちょっと待って。
なぜ、いつまでも世界から戦争がなくならないのか。
なぜ、こんなにも富める人と貧しい人との格差が大きいのか。
いま、わたしたちが社会で抱えている問題の解決策は、歴史の中にある。
もし、歴史そのものが間違っていたとしら、解決策も当然間違っていることになる。
この本の著者ハワード・ジンもこう語る。
自分の過ちを正すには、わたしたち一人ひとりが、
その過ちをありのままに見つめなければならない。
歴史の裏側で、取り上げられずにいた問題やテーマは数多い。勝者の影にいるさまざまな人びとの声は、聞こえないからといって存在しないわけではない。
彼らもまた重要な”歴史”の一員である。
さまざまな視点から歴史をとらえ直すことは、いまの私たちの問題を解決するためのヒントになるはず。
中高生ための『民衆のアメリカ史』
ハワード・ジンは、1922年ニューヨーク州ブルックリン生まれ。ボストン大学政治学科名誉教授であり、政治学者としてだけでなく、歴史家、社会評論家、劇作家としての顔も持つ。
ハワード・ジンは1980年代に『民衆のアメリカ史』を発表。”新大陸発見”からのアメリカの歴史を民衆(マイノリティ)の視点からとらえ直すもので、それまでアメリカの英雄とされてきたコロンブスをはじめ歴代の大統領たちをこっぴどくこき下ろす内容に、多くの”愛国者たち”から批判の声があがり物議を醸した。
一方で、民衆からは大きな支持のもと売り上げは百万部以上、全米の高校や大学で教科書として現在も採用されている有名著書である。全米図書賞歴史部門にノミネートされた。
『学校では教えてくれない本当のアメリカ史』は、『民衆のアメリカ史』の内容をティーンネイジャー向けに編集したもの。
アメリカ大陸を”発見”した人物の名前は”コロンブス”だということはよく知られているが、彼がどんな目的でここに辿りついたのか、知っているだろうか?
アメリカ大陸を発見したコロンブス一行が、ここで最初に行ったのはどんなことなのか?
そもそも、もともとあった土地を”発見”するという表現も、
先に住んでいた人たちに勝手に”インディアン”と名付けるのも、
よく考えるとおかしいってことに気づくはず。
「なぜアメリカには奴隷制ができたのか?」「なぜアメリカはいつも戦争をしているのか?」というアメリカの本質に迫る疑問から「なぜアメリカは日本に原子爆弾を投下したのか」という、わたしたち日本人の歴史に関わる問題の答えも見えてくる。
小説はつまらないというあなたにもおすすめですよ!
上下巻2冊セットですが、あっという間に読み終わりました。
ブックデータ
出版社: あすなろ書房 (2010/4/1)
ISBN-13: 978-4751526101
発売日: 2010/4/1