原田マハ『星がひとつほしいとの祈り』

『星がひとつほしいとの祈り』
  • 原田マハが「女性」をテーマにした短編集
  • 女性だからこそ共感する部分がある。
  • 「斉唱」が入試問題に出典

原田マハがさまざまな年代の女性を主人公に描く短編集。長編の原田さんとも違った味わいがある。

娘、母、妻…さまざまな女性を描く短編小説

* もくじ *

椿姫 La traviata
夜明けまで Before the Daybreak Comes
星がひとつほしいとの祈り Pray for a Star
寄り道 On Her Way Home
斉唱 The Harmony
長良川 River Runs Through It
沈下橋 Lorelei

***

売れっ子コピーライターの文香は、休暇で訪れた道後温泉の宿でマッサージ師の老婆と出会う。盲目の彼女は、横たわる文香に静かに自分の哀しい過去を語りはじめる・・・「星がひとつほしいとの祈り」
日本を代表する大女優・堂本あかりが死んだ。母であるあかりの最後の願いをかなえるため、娘・ひかるは、ひとかけらの骨とともに大分へと向かう・・・「夜明け前」

母と娘、友人、偶然出会った人・・・どの短編にも、女性と女性が登場する。娘であり、母であり、妻であり、時に闇の中で迷いそうになる時もある。そこにひとすじの希望をみせてくれたのは、世代や時代が過ぎゆきても変わらない、女たちの強さとしなやかさ。女たちの心の細やかさを味わいつつ、短い物語の中で、女として生きることのなにかを投げかけられたような感じがする。

たまには寄り道もええもんやね

「寄り道」は、アラフォー女子、ハグとナガラが白神山地へ女ふたり旅をする物語。ハグこと波口喜美が母との旅行先でのこんなセリフを思い返す。

「こんなふうに、たまには寄り道もええもんやね。一生けんめい働いて、まっすぐに生きてきて。だけど、ときどき寄り道するのんも」

喜美の母は、旅を寄り道に例えた。「寄り道」のほかにも、「斉唱」では、母と娘が学校の課外授業として佐渡へトキを見に行ったり、「長良川」では若い夫婦と母親が鵜飼を観光したりと、旅先での物語が多い。これまでを振り返ったり、これからを少しだけ描いてみたりする、ちょっとした寄り道の時間は、慌ただしく日々が過行く女性たちに必要なものかもしれない。

中でも、「夜明け前」「星がひとつほしいとの祈り」はぐっときた。

ブックデータ

国語入試問題に出た本
「斉唱」は、昨年度の国語入試問題でよく出典された作品として、読んでみたかった物語。母を拒み、学校を休みがちな中学生の女の子・唯(ゆい)が主人公。同年代なら共感するところも多いのでは。受験生にも。

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