いい人っていいこと?~吉野万理子『いい人ランキング』

万理子『いい人ランキング」
高学年から中学生向け
いじめもテーマ
桃は中学二年生。
お母さんの再婚で二学期から名字が変わり、木佐貫桃になった。
文化祭で桃のクラスは「ミス岬中・ミスター岬中」を企画していたが、学校からミスコンイベントにNGが出されてしまう。ミスコンを企画していた沙也子と知奈津は納得がいかないが、代わりに企画された「岬中学の創立六十年の歴史をたどる」というクラス展示は大盛況に終わった。
文化祭の後、沙也子と知奈津はクラスにある企画を提案する。
それが「いい人ランキング」
クラスで一番性格のいい人を投票で決めるというのだ。
外見で人を選ぶミスコンなら恨まれることがあっても、「いい人」ならその心配もない。
そうしてクラス投票で選ばれたのは、桃だった。
人の悪口を言わないし、掃除はサボらないし、「宿題を見せて」と頼まれたら気前よく見せてくれる。
「これからも、うちのクラスの模範的な『いい人』でいてね」と言われ、戸惑いながらもみんなに選ばれたことをうれしく思っていた桃だったが…。
だれもみな、二面性を持っている。
どんな人にも、誰かに見せる顔と誰にも見せない顔がある。意図的にいくつもの顔を使い分けている人もいれば、自分でもそれに気づかない人もいる。中には、見ている人が自分にとって都合のいい面だけを受け入れ、そうでない部分を「裏の顔」だと指をさされることもある。
みんなの前にいる自分と誰にも見せない自分がいる、ということはおかしなことではなく、むしろごく当たり前のこと。
みんなから「いい人」に選ばれた桃は、期待に応えようと「いい人」であり続けようとしてしまう。その思いは「みんな」に都合よく利用され、桃が思っていなかった方向へと流れはじめていく。
ここに登場する中学生はみんな素直ないい子ばかりではないが、悪い子ばかりでもない。いろんな自分を両立させながら”みんな”の中でどう生き残っていくか、もがいている。
困っている桃を助ける圭機(けいき)は、何でもこなせるスーパーマンのようでいて、誰にも見せない苦い過去を持っている。その過去を埋めて隠してしまおうとするように、「いい人」を演じ、誰からも好かれ愛される人間になろうと努力している。最後まで「いい人」を演じ続ければ、自分をすべて受け入れることができるのだろうか。
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