愛とか恋とか語り切れない、だから恋愛アンソロジー『I LOVE YOU』

『I love you』
  • 中学生・高校生におすすめ恋愛アンソロジー
  • 通学や朝読書にもおすすめ
  • なにを読んだらいいか迷っている人に

 *もくじ*

伊坂幸太郎 「透明ポーラーベア」
石田衣良  「魔法のボタン」
市川拓司  「卒業写真」

中田永一  「百瀬、こっちを向いて
中村 航  「突き抜けろ」
本田孝好  「Sidewalk Talk」

はんぶんあらすじ&レビュー

面白かったのは、やっぱり『百瀬、こっちを向いて』

なにしろ、これが読みたくてこのアンソロジーを手にしのだから一番お気に入りに決まっている。

相原ノボルは、クラスの中の底辺的存在。自称、人間レベル2。
近所で仲のいい先輩・宮崎瞬に頼まれて、百瀬陽の彼氏を演じることになる。

野良猫のような挑戦的な目つきで気が強い女の子・百瀬と、人間レベル2と自称する相原の対照的なキャラクターがよい。百瀬に振り回されるながらも、自分を見てくれないとわかっている相手に、心ならず惹かれていっちゃう相原のタジタジ加減や切なさとか。「少年よ、頑張れ」と励ましたくなっちゃう。
でも切なさで言ったら、百瀬なのよね。
宮崎先輩も彼女の神林さんも、みんないい子で、どの恋も応援したくなっちゃう。でもそれぞれのベクトルがぶつかり合ってるから、すべての恋が成就するってあり得なくて…。いやぁん、切ない。
期待して裏切られない、胸キュンレベルは10。

中学や高校の時って、直線ばっかりの恋愛ベクトルが交差し合ってたなぁ、なんて相関図を思い浮かべちゃった。

あとは、伊坂さんの『透明ポーラーベアー』
仙台の動物園を思い浮かべながら読めた。

『Sidewalk Talk』は、泣けた。
(最近、涙腺がかなり緩いけれど、これは涙を流さずにすんだわい)
離婚する夫婦が最後の食事をするというだけのストーリー。
長い間、同じ時間と想いを経験した夫婦だけが持つ「共有」という感性。
「共有」できることの嬉しさや喜びってことについて、切なく受け止めた。
伊藤たかみさんの芥川賞受賞作「八月の路上に捨てる」に同時収録されていた「貝からみる風景」を読んだときと同じような切なさ。(ちなみに、これは落涙。芥川賞受賞作より、好き)
こんな作品嫌いだけど、沁みる。

恋愛なんてお手軽に読んだもの勝ち。

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