ひとりぼっちはひとりじゃない~『ジェーンとキツネとわたし』

ジェーンとキツネとわたし
10代におすすめしたい絵本
いじめをテーマにした絵本
 「ひとり」でも勇気を与えてくれる本

「きょうはどこにも居場所がない」

エレーヌは、いつもひとりぼっちだ。正しくは、ずっとひとりだったわけじゃない。前は、「あの子」たちといつも一緒だった。でもエレーヌは知っている。落書きを書いたのは、あの子たちだって。

「エレーヌは体重100キロ」

想像力が豊かで繊細なエレーヌは、あの子たちの前で簡単にひるんでしまう。悪口や笑い声を聞くたびにまるで胸に穴があいたように痛みが刺す。

エレーヌは、バスの中でいつも本を読む。お気に入りは『ジェーン・エア』

孤児で孤独に育ったジェーン。

華奢でかしこく思慮深いおとなの女性となったジェーンに憧れながらも、自分の人生がジェーンのようにうまくはいかないってことを知っている。

孤独を知るジェーンの物語は、エレーヌに現実を忘れさせ、彼女はその世界に閉じこもってゆく。

 

ある日、先生が言った。

クラス全員で英語特訓のキャンプに行くのだという。

40人全員で!ひとりも友だちがいないのに!?

しかも、水着を着て!

思った通り、キャンプでは嫌なことが起こる。

そんな時、エレーヌの前に現れたのがいっぴきのキツネ。

エレーヌは、優しい目をしたキツネと友だちになりたいと思う。

「それならわたしも、きみに心を開くよ、ほんとうに。」

この小さな出会いがエレーヌをほんの少し変えてゆく。

さしみくて、やりきれなくて、孤独の中でうずくまっているエレーヌは、本の世界に没頭することで物語の中に自分を閉じ込めていくが、本当は「心を開きたい」と思っていたみたい。

小さな出来事は、エレーヌの心に小さな変化をもたらし、彼女を一歩強くさせる。

冬のはじまりのような、はかなさを感じさせるモノクロのイラスト。シンプルな線で描かれる表情豊かなエレーヌに、言い出せないたくさんの飲み込んだ言葉が伝わる。

どんな物語も、最後まで読んでみなければ結末はわからない。

自分の物語だって、いまはまだどこかに向かう途中なのだから。

心に余韻を残す10代におすすめの絵本。

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