加藤諦三『受験生の心の休ませ方』~なぜ勉強するのか迷う時

『受験生の心の休ませ方』
  • 受験生や勉強・進路に悩む人に
  • そんなお子さんを支えるおうちの人に
  • 悩みがある人に

悩み多き受験生とおうちの方へ

「なんのために勉強するの?」

「どうして私は大学に行くんだろう?」

そんな疑問に立ち止まる受験生に、ちょっと休憩して読んでみて欲しいのがこの本。

受験生のそんな悩みや迷いに、心理学者の加藤諦三さんがご自身の高校時代の日記を振り返りながら答えてくれるこの本。

でもね、タイトルに騙されてはいけません。

心の休ませ方…休まらない。むしろ痛みを伴うことばかり書いてある。でも迷いは吹っ切れる。

生きるのが楽しくない

本文より気になったところを紹介。

中学生の23%(4人にひとり)に抗うつ症状が見られるという調査結果も。
「何をしても楽しくない」のは、楽しむ能力がないということ。
待つ能力がなくなっていること。
憎しみの感情から楽しめないことを指摘。
そうしたことに子どもたち本人は気づいていない。

「待つ」能力の低下

子どもたちと接する中で、「待つ」能力の低下を実感することがある。

能力の低下は本人だけの問題ではなくて、メディアの発達や便利さに「人間本来の速度」が奪われている環境の結果だと思うの。

人間には、当たり前の自然な成長のプロセスがある。
誰も傷つくことなしに、青春を生きていくことはできない。
そして、その傷が深ければ深いほど、そのあとの再生も力強い。
傷の深さは再生の輝きに比例する。(本文より引用)

メディアのスピードに慣れている子どもたちは、物事には自然な時間の流れが必要なことを知らない。

種を植えたらすぐに花が咲くことがないように、スポーツは始めたばかりで上達しないし、親友は簡単にできないし、悩みもすぐには解決しない。

失恋の痛みはいつまでも引きずるが、いつかは忘れる。時間の流れが、いつか忘れさせてくれるのだ。

著者の言う「人間の自然な時間の流れ」こそが、待つ力や人のゆとりを育てる。

他にも紹介した言葉がたくさん詰まった1冊です。

無駄のない簡潔な言葉で、グサグサくる。
「まったくその通りです」とうなづくばかり。
受験生向けのタイトルですが、親の立場で読んでも見えてくるものがあり、悩める人なら誰にもオススメです。

本を読むということ

この自然な時間の流れに、本を読む速度がすごく近いと私は思う。
私にとって本を読む時間は、自分のペースを取り戻す大事な時間になっている。
仕事や家族の都合で一日中、人のペースで動く中、本を読む時だけは自分のペースを許される。読書の時間が自分の時間をリセットしてくれる。

利便性を重視している今の時代の中で、子どもたちは知らずに自分本来のペースを奪われていて、そのことが大きなストレスの要因のひとつになっていると私は思っています。

いじめ問題の要因は、想像力の欠如ではなく、ストレスです。いじめてる子たちは、自分たちが何をしているかちゃんと知ってるよ。想像力もちゃんとあります。でも止められない、それはストレスが原因だから。

周りの時間に合わせた生活ばかりだと、周りを自分に合わせようと考えるのは自然な流れだよね。そういう人にとっては、人の都合を考えないというのは自然なことになってしまう。

少し脱線しましたが。

読書じゃなくてもいいから、何もしない時間を作ったり、手作業したり、自分のペースを取り戻す時間を上手に作ることは大切ですよ。

本をチェックする

単行本: 160ページ
出版社: PHP研究所
ISBN-13: 978-4569687889
発売日: 2008/6/26

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