少年は自分の《真実》と向き合う~パトリック・ネス【怪物はささやく】

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おすすめポイント

BOOKS雨だれ 中学生・高校生におすすめ
BOOKS雨だれ 海外ファンタジー
BOOKS雨だれ 読書感想文にもおすすめ
BOOKS雨だれ カーネギー賞受賞作
BOOKS雨だれ 映画「怪物はささやく」原作

はんぶんあらすじ&レビュー

少年コナーは病気の母とふたりぐらし。母の容体はあまりよくないらしい。ある夜ふけ、眠っていたコナーのもとに、怪物が現れる。そいつはコナーの家の向こうにある墓地にそびえ立つイチイの木だった。裸足でコナーの部屋に乗り込んできたイチイの怪物は一方的にコナーに言った。

「これからお前に三つの物語を聞かせる。わたしが三つの物語を語り終えたら、次はお前が四つめの物語をわたしに話すのだ。

真実を語れとイチイは言う。

母が入院することになり、コナーは祖母の家でしばらく一緒に暮らすことになった。口うるさい祖母とはできれば一緒に暮らしたくないが、アメリカで新しい家族と生活している父さんは頼りにならない。学校では、クラスメイトたちともうまくやれないけれど、そんなことはどうでもいい。心配なのは、母さんのこと。大丈夫だという母さんの言葉を信じたいけれど、母さんに残された時間が多くはないことをコナーも感じている。

そんなコナーにイチイが語り聞かせた物語は、悪夢のような「正義などない世界」の真実の物語。

一度抱えてしまった不安や恐怖は、そのままにしていると胸の奥深くにどんどん潜ってしまう。恐怖を隠したつもりでも、恐怖そのものは消えることがない。暗闇の中で自分の手のひらが見えないように、奥深くにしまいこんでしまった恐怖の正体は自分にもわからないままに、そこに残り続ける。超えるためには、恐怖を明るいところにさらして、まずはその正体を知ることが必要だ。明るいところへさらすこと、つまり誰かに話して分かち合うこと。

コナーはその恐怖と向き合うことを避けていた。だれかに話して分かち合うことなんてしたくなかった。恐怖と向き合うことは、恐怖を認めることだから。

コナーは自分が抱えている恐怖の正体を知ることができるのか。そして、イチイの話を聞き終わった時、コナーは自分の真実を語り、恐怖と向き合うことができるのか。

著者・ネスと原案・ダウド

この小説は、シヴォーン・ダウドの原案をパトリック・ネスが小説として書き上げました。

2007年、ひとりのイギリス人作家が亡くなりました。彼女の名はシヴォーン・ダウド。

2006年、デビュー作でブランフォード・ボウズ賞を受賞。次作でもビスト最優秀児童図書賞を受賞するなど、今後の児童文学での活躍を期待された矢先の、悲しい知らせでした。

ダウドが亡くなったのち、すでに完成していた遺作がいくつか単行本として刊行されました。その中のひとつ『ボグ・チャイルド』は、カーネギー賞を受賞しています。

ダウドの遺作の中には、まだ小説という形になっていない構想だけが書き残されたメモもありました。『怪物はささやく』はダウドの構想メモを原案にして、パトリック・ネスが小説を書き上げた、ふたりの合作といえる作品です。

受賞歴など

BOOKS雨だれ 2012年カーネギー賞受賞

BOOKS雨だれ 【2012年】第58回青少年読書感想文コンクール課題図書(中学校の部)

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映画原作


2016年10月スペインにて映画公開。日本では2017年6月より劇場公開。

監督:J.A.バヨナ

出演:ルイス・マクドゥーガル(コナー役)、フェリシティ・ジョーンズ(母役)、しがにー・ウィーバー(祖母役)

スペインアカデミー賞であるゴヤ賞最多9部門受賞

映画『怪物はささやく』公式サイト