金原瑞人【翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった】

エッセイ | 仕事

翻訳の仕事に興味があるなら、ぜひおすすめしたいのが金原瑞人さんのエッセイ『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』タイトル通り、カレー屋になるはずだったのに、気づいたら翻訳の仕事をしていたという著者の、翻訳への思いや、翻訳の面白さをつづった1冊。

奥深い翻訳の世界

翻訳家という職業は立場なき人びとである。ある意味ヤドリギかコバンザメのようなものかもしれない。江國香織の書いた本はすべて知っている人はいるけれど、金原の訳した本をすべて知っている人はいない。

なんて金原さんはおっしゃってますが、これだけ訳した本がぱっと出てくるような作家並みに名前の知られている翻訳家さんは他にはいないでしょう。翻訳生活20年で、翻訳した本はなんと300冊を超える。

『豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)』『青空のむこう』『ヘヴンアイズ』『かかし』『不思議を売る男』
そうだ、先日読んだ『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』も、金原瑞人さんの翻訳でした。
代田亜香子さんとの共訳ですが『プリンセス・ダイアリー』のような女子力高めの翻訳もこなしちゃう。

金原さんの選ぶ言葉は、物語にぴったりと合っているだけじゃなく、すんなりと流れ込んでくるような心地よさがあります。

そんな金原さんが、自身を語り、翻訳のおもしろさを語るエッセイ集。翻訳家の話なんておもしろいの?なんてつぶやいちゃったそこのあなた。おもしろいっすよ。

就活が全滅だった金原さんは屋台のカレー屋をやることにして一か月ほど毎日カレーばっかり作っていたエピソードだとか、ヘミングウェイが大好きなことだとか、江國香織との対談もあったりと内容も盛りだくさん。

なるへそ~と興味深かったのは、「I」をいかに訳すかというおはなし。英語では一人称は「I」ひとつしかないのに、日本語では「ぼく、おれ、わたし、わたくし、あたし、あたい、自分、おれ、わし、拙者…」とまぁ、ずいぶんたくさんある。これをどう訳すかで作品のイメージも変わってくるのだから、悩むところなのだ。中には、男女がはっきりわからない作品もあるそうで、その悩みどころがなんだか楽しそうなのよね。

自身が訳した単行本で文庫になったものは数えるほどしかないそうですが、そんな中で文庫になったこのエッセイ集。

翻訳本が好きで、YAが好きな人には、特にもおすすめです。

おすすめポイント

◇中学生・高校生・大人に

◇翻訳の仕事にあこがれている人に

◇英語が好きな人に

◇海外小説が好きな人に