重松清『希望ヶ丘の人びと』

重松清『希望ヶ丘の人びと』
  • 中学生・高校生・大人にもおすすめ
  • ニュータウンで学習塾を経営する家族の物語
  • なつかしい昭和シーンも登場

本の紹介

希望ヶ丘は、とある海の町のちょっと古いニュータウン。

ガンで亡くなった妻のふるさとである希望が丘に引っ越してきた田島さん一家。春から中学3年生になる美嘉と小学5年生になる亮太とともに、田島さんはこの街で学習塾の教室長として新しい生活をスタートさせるのだが……。

重松作品は、「楽しむ」というよりは「かみしめる」ような作品が多い。意地悪なクラスメイトとか教育熱心ママとか、共通言語を持たないような人種が主人公を苦悩させて、その中で支えてくれる人の存在があり、自分を見つめ成長していく王道パターン。でもって、その成長ぶりに読者はもれなく涙する。私も、大好きなパターン。

「希望ヶ丘の人々」も、まぁそのパターンに乗っかっているんだけれど、もっと軽く読めて楽しめるエンタメ作品。

声を張り上げて立ち上がっているのが、40代をオーバーしているおじさんたちというのが、なんとも残念なところなのですが。小説の中の10代たち、完全におじさんたちに押されてる。1963年生まれの重松さん、同世代の主人公たちに自分の青春を大いに重ねたんじゃないかな。オジサンたちを応援しつつ、子どもたちに向けて「おじさんたちに負けてんなよ」というメッセージを送る。

主人公の同世代には、あの頃の懐かしいあれこれもたくさん登場します。世代によって、引っかかるポイントが全く違う。10代の親子読書におすすめな1冊です。

ドラマ「希望ヶ丘の人びと」

2016年WOWOW「連続ドラマ度土曜オリジナルドラマ」で放送。
全5回。
【監督】深川栄洋
【キャスト】沢村一樹、和久井映見、桜田ひより、二宮慶多ほか

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文庫: 400ページ
出版社: 講談社
発売日: 2015/11/13

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。
出版社勤務を経て、1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。学校を舞台に10代の心情を描いた小説も多く、多くの作品が映画化やドラマ化されベストセラーを生み出している。国語入試問題によく出典される作家としても、10代にお薦めしたい作家。
【主な受賞歴】
『ナイフ』坪田丈二郎文学賞受賞
『エイジ』山本周五郎賞受賞
『ビタミンF』直木賞
『十字架』吉川英治文学賞


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