森絵都短編集『気分上々』

森絵都『気分上々』
  • 直木賞作家・森絵都のおすすめセレクト短編集
  • コミカルでシュールな女子系小説

児童文学の『カラフル』はベストセラー。長編小説『みかづき』で本屋大賞にノミネートと、幅広い読者ファンのいる森絵都さんだが、彼女の最大の魅力は短編にある。短編集『風に舞いあがるビニールシート』では、第135回直木賞も受賞している。

『気分上々』はあちこちの文芸誌やファッション誌に寄せた9つの短編をまとめたもの。

セレクト短編集

その都度のテーマにそって書かれたものだけど、「こんな自分を変えたい」っていう共通したテーマを感じます。ストーリーというよりも、物語のおかれている状況がおもしろい。

**もくじ**

ウエルカムの小部屋

彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日

17レボリューション

東の果つるところ

本が失われた日、の翌日

プレノワール

ヨハネスブルグのマフィア

気分上々

ウエルカムの小部屋

誰もがうらやむ理想的な婚約者と別れて、自称発明家の夫と結婚したわたし。新しく引っ越したマンションの部屋で、彼が最も興味をもったのはトイレの便蓋!?

彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日

彼女は、元彼の結婚式の帰りだった。彼は、祖母の四十九日を終えた帰りだった。偶然バーで出会った男女の小さな出来事をそれぞれの視点から描きます。

17レボリューション

17歳の誕生日、あたしは親友のイズモに絶交を申し渡した。自分だけの確固たるものを見つけるため、千春は思い切った自分改革に乗り出すが。『きみが見つける物語 ティーンエイジ・レボリューション』に収録を前提に書かれた短編。

本物の恋

彼を忘れるはずがない。八年前、一組のカップルを追いかけた、あの人生最大の衝撃を受けた特別な夜。

東の果つるところ

おまえの誕生を待たずに私は命を失うかもしれない。その前に、おまえに話しておかなければならない、一族の呪わしいひみつを・・・。

本が失われた日、の翌日

「あら、知らないんですか。本は昨日付でこの世界から失われたんですよ。」わずか3ページのショートショート。

プレノワール

母の反対を押し切って、二つ星レストランのシェフになったジャンのもとに、母危篤の知らせが入る。最後まで相変わらずの母が最期に残した言葉の意味するところは・・・。

ヨハネスブルグのマフィア

恋の始まりは黄熱病の予防接種。合同庁舎の待合室で、本を開いたまま1ページもめくっていない男に、わたしは心を奪われた。

気分上々

「グチも弱音もはかない、言いわけしない。むやみにペラペラしゃべらない。そんないい男になれ」という父の遺言を守り、高倉健のように無口な中学生活を送る柊也だったが、ある日我慢の限界が⁉

お気に入りは、「東の果つるところ」。一族のひみつは内緒にしておくとして、その呪縛が一目でわかる見開きの家系図は、ちょっとしたため息もので、何度も見返したくなる。

「プレノワール」もいつか読み返したくなるおはなし。

「仮に、私がお前を認めることがあるとしたら、その時は花に姿を変えておまえに知らせよう」という遺言を残した母。おかしな言い伝えの残る古い村で奮闘する男の姿がコミカルで、ラストはおしゃれにしめてくれる。

新しい自分を見つけた人もうまく変えられなかった人もいいるけれどこんな自分もいいじゃないかと思えたら、気分は上々。時にブラックをスパイスにしたシュールな短編集はくせになるよ。

著者プロフィール

森絵都(もりえと)

1968年生まれ、東京都出身。

早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。『カラフル』をはじめ、数々の児童文学を発表。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。

【主な受賞歴】

『リズム』第31回講談社児童文学新人賞

『カラフル』第46回産経児童出版文化賞

『風に舞いあがるビニールシート』第135回直木賞

『みかづき』第12回中央公論文芸賞

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