キノコ雲に追われて―二重被爆者9人の証言

キノコ雲に追われて二重被爆者9人の証言 ノンフィクション
中学生・高校生に読んで欲しい本
戦争・原爆について知るノンフィクション
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戦後10年に刊行された二重被爆者の記録

1945年8月6日、世界で初めての原子爆弾が広島に投下された。

それから3日後の8月9日、長崎にふたつめの原爆が投下される。

広島と長崎、300キロ離れたふたつの町で二度原子爆弾の被害にあいながらも生きのびた人たちがいる。二重被爆者である。

二重被爆者の存在は長い間、世間にほとんど知られることはなかった。二重被爆した方々が、その事実を語らなかったのも理由のひとつでもある。二重被爆者のひとりである山口彊さんは、90歳になり二重被爆の事実を広めようと語り部の活動をはじめた。

わたしも山口さんの著書をきっかけに二重被爆を知った。

平和のバトンをつないで―広島と長崎の二重被爆者・山口彊さんからの伝言
広島と長崎で、二度にわたり原爆投下に遭遇した山口彊さん。それまで語ることのなかった思いを90歳になり語ることを決意した。山口さんの人生とその思いをつづったノンフィクション。

2006年には記録映画「二重被爆」が公開され、海外でも上映された。戦後60年を過ぎて、二重被爆の真実が見えてきたのである。

ここに1冊の本がある。

1957年アメリカで出版された二重被爆者のドキュメンタリーである。

当時、ニューヨークタイムズ東京支局長を務めたロバート・トランブルは終戦から10年後の1955年に二重被爆者9人へ取材を行った。

戦後10年という早い時期のインタビューだということもあるだろうが、どの方も細部まで鮮明に記憶されている。

ここでは、その時に語られた彼らの声をそのまま引用している。さらに日本語訳された本書は、丁寧な文章でより読みやすく綴られているのではないかと思う。

また、海外向けに出版されたこの本は、海外から見た日本の視点で書かれているので、私たちにとってはよく知られているあれこれについて注意書きが添えられていたりするのも興味深い。例えばこんな箇所。

恋愛しないと結婚できないというのは西洋の考え方だ。日本ではまず結婚し、それから恋愛するということがよくあった。

これは、新婚のヒラタさんの結婚について書かれた場面である。被爆の二週間前に結婚したばかりのヒラタさんは、広島の原爆投下で若い奥さんを亡くされた。その事実を抱えた重い足取りで、自分と妻の実家のある長崎に戻った時に、再び原爆に襲われている。

被害を抑えることはできなかったのか

この本を読みながらふと、原爆は防ぐことのできない惨事だったのだろうかという疑問が浮かんだ。例えば、広島での情報がもっと早く正しく伝わっていれば長崎の被害はより最小限に抑えられたのではないだろうか。

広島から長崎へと戻った彼らは、家族や職場の同僚に原爆についてすぐに伝えている。ぴかっと光ったらすぐに身を伏せるように、というアドバイスのおかげで被害が小さくすんだという事実もある。

この本で取材を受けた二重被爆者の中に、当時長崎日報会長であり、その後県知事となった西岡竹次郎さんがいる。

西岡さんは、広島から長崎に戻るとそのまま知事に会い、広島が全壊したことを伝えた。次の爆弾のターゲットは長崎かもしれないという予想をし、長崎が攻撃を受けた場合には、すぐに対策を取るべきだと主張した。一方で、言論規制が厳しかった当時の状況から、この話はだれにももらさないでほしい、とも付け加えた。

もしもあの時、新聞を使ってこの情報を広めていたなら多くの命が助かったかもしれないと、当時の自分を苦々しくふりかえっている。

ここで語られる9人の体験は、原爆の悲惨さを伝えるだけでなく、守るべきもののために、情報を正しく伝えることの重要性も説く。それは時代を経て、何があったのか知ろうとするわたしたちにもつながる。知ることは、戦争と平和について考えるための最初の大きな一歩になる。

この本に登場する9人の方々

ヒラタケンシ
ヤマグチツトム
モリモトシゲヨシ
ドイツイタロウ
キノシタシンジ
コマツマサオ
ニシオカタケジロウ
イワナガアキラ
ミシマサカジロウ

本著の出版当時、取材した9人のほかさらに9人と合わせて18人の二重被爆者がいるとのことだが、「訳者あとがき」によると2010年時点で165人の二重被爆者が認めらているそうです。

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