中脇初枝『祈祷師の娘』

中脇初枝『祈祷師の娘』
  • 血のつながらない家族の物語
  • 主人公は中学生の女の子

中脇初枝さんの作品には、複雑な関係にある家族の物語が多い。『祈祷師の娘』も血のつながりのない家族のなかで暮らす、中学生の女の子はるちゃんの物語。

あらすじ

春永(はるなが)は、はるちゃんと呼ばれている。

はるちゃんは中学生の女の子で、祈祷師の家に暮らす。

一緒に暮らす「おとうさん」とも「おかあさん」とも血のつながりはない。 実の母は、おとうさんの元にはるちゃんを残して、家を出て行った。

はるちゃんがいま暮らしている家族は4人。

義父であった「おとうさん」

おとうさんの妹である「おかあさん」

おかあさんの実の娘ではるちゃんよりも4つ上の和花ちゃん。

少し複雑な関係に見えるが、仲良く暮らしている。

お父さんと毎朝行水をしているはるちゃんは、自分がおかあさんや和花ちゃんのように祈祷の力がないことで、居場所のなさ(所在なさ)を感じている。

自分になんの力もないことは自分が一番よく知っていた。ただ行水さえしていれば、力を持っていなくても力を持つみんなと同じでいられるように思った。血がつながっていなくても、血がつながっているように思っていられた。力のつながりより血のつながりより濃いとはいえなくても、同じくらいのつながりを持っていられるような気がした。

血のつながりについて複雑な思いを抱えながら、大事にされていることがはるちゃんをしっかりと支えていることにほっとする。

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