鍋田恭孝『子どものまま中年化する若者たち-根拠なき万能感とあきらめの心理 』

子どものまま中年化する若者たち ノンフィクション
高校生・大学生に読んで欲しい新書
教育・子どもに携わる人に
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豊かさに満たされない若者たち

いま私たちの生活には、あらゆるものであふれている。生活に必要なものは、都市部・農村部に関わらず、たいてい手に入れることができる。物質的なものばかりではない。テレビなどのメディアや流通の発達により、教育や文化の面においても、ほぼタイムラグなく、日本中同じように情報も流れてくる。こうした経済と文化の発展を豊かさのひとつとするならば、わたしたちの暮らしはとても豊かだと言える。その一方で、満たされない感情や悩みを抱える若者も増えている。

著者は、1947年生まれ。精神科医であり、大学で臨床心理を学ぶ学生に教鞭をとる。「若者の悩み」に関りの深い著者が、このところ「若者の悩み」が大きく変わりつつあるという。

理想と現実とのギャップからの現実逃避。他人や社会に認められたい承認欲求。堪えられないほどの極度の不安や緊張・・・。悩みに苦しみ乗り越える体験は、若者の特権である。

「わからない」若者たち

生きることに必要なものを不自由なく与えられてきた現代の若者たちは、自分の置かれている環境に大きな不満はない。未来に大きな期待をすることもないが、それなりに充実した日々を送ることができればよいと考えている。

一見、充実した生活を送っているようにみえる学生たちにも、やはり不安や悩みがある。しかし、それが何なのかわからない。このごろの若者が「自分を語る力」が衰えている、と著者は語る。そして、一風かわったことに、彼らにはそうした不安や悩みを解決したいという積極性が薄い。

根拠のないささやかなプライドを守り、優しくて傷つきやすい。

他者とそれとなく距離をとり、他者の領域に入り込まない。

周りに認められたいから、真面目で与えられた課題を淡々とこなす。

「省エネ」な生き方と言える。事実、彼らは「コスパ」をとても重視している。

まるで定年を待つサラリーマンである。人生において必要なあれこれをすでに手に入れ、この先の人生にも大きな変化はないだろうとどこか達観したような空気を漂わせている若者たち。しかし、彼らには中年が経てきたであろう迷いや葛藤や闘いの歴史がすっぽっりと抜けている。

培養された植物のように整えられた環境で育ち、ふわふわと漂うように生きる若者たちに心許なさも感じるが、彼らがこの先どのような未来をつくりあげるのか、やりたいようにやってみろと背中を押したい。(彼らに言わせると、それがいちばん難しいらしい)

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