難病と闘う女子~大野 更紗 『困ってる人』

『困ってる人』
中学生から読める闘病ノンフィクション
福祉を考える本

 

難病や障害に困っている人の著書は多いが、読みながら「おもしろい」という感想がでてきたのは乙武洋匡さんの「五体不満足」以来である。

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難病は突然に

人様の生き様に対して「おもしろいですね」という時は、「個性的で数奇なあなたにしかできない素晴らしい人生を歩まれてるんですね」という意味で、尊敬に値する褒め言葉であるが、障害を持つ人に対してこの賛辞を述べるのは、通常ためらわれる。

でも、あえて言いたい。人生を楽しもうとしている彼女の人生もまた、おもしろい。

もちろん、彼女の難病生活は、一筋縄ではいかない壮絶なものである。生きたまま体中に電流を流されたり、麻酔なしで筋肉を切り取られたりする。それって、帝国時代の拷問ではないのですか~!!!!?とこちらも絶叫しそうになる。乙女のおしりがどばっと流出したりする。(詳しくは本書で)

そして、その難病はいつ治るとも知れない。もしかしたら治らないかもしれない不安を抱えている。
それでも、彼女は絶望しない。彼女自身がそう語っているから当然そうなのだが、そのことは彼女の書く文章からも伝わってくる。
「ぎゃーーーーーいた~い」と叫びながら、「次第に気が遠くなってくる。いっそ、気絶したい。」と投げやりにおどけてみたり、または、精神状態が不安定だったころに「つらい」「苦しい」と書き綴ったmixiの日記をそのまま転載し、こう語る。

 

アレマア、なんと暗いことか!とてもウツ!読むだけで、ただでさえ鬱々とした世の中、さらに心がどんよりとしてくるようである。自ら記しておいて言うのもおかしいが、あまり繰り返し読んではいけない。

 

読み手にまで心遣いいただいているのである。なんといい人なのか。
とある特殊な病院に検査入院した著者。私には、においも音もない表面的な状況を想像することしかできず、そこからは「わかる」ことなど到底ないが、そこでの心を壊すような経験が「生きる」ことの意味やきらめきを著者に与えたのかもしれない。
現在、病院を退院し通院しながらひとり暮らしをしている著者。

その生きる原動力は「恋」だったりする。
楽しんでこそ人生、きらめきがあってこそ人生。
そんなメッセージを与えてくれる難病本、他にはないだろう。

難病や障害を抱えている人が仕事をするのはとても大変なことだ。
これだけのベストセラー、次回作も読んでみたいと思わせる文才、難病や障害を抱えて外に仕事にでるのが難しい人にとって生活のひとつの可能性を示した希望の作品でもある。

受賞歴など

第5回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞受賞。

なんだかおもしろい名前の賞ですね。

*本をチェックする*

この本もおすすめです

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』
進行性筋ジストロフィー。体の動きがままならない、ほぼ寝たきりの重度の身体障害者でありながら、独り暮らし生活を送っている鹿野靖明(40歳)と彼の生活を支えるボランティアたちの日々をつづるノンフィクション。

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