リザ・テツナー『黒い兄弟』~煙突掃除夫の少年たちの勇気と友情の物語

リザ・テツナー「黒い男」
  • 【BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊!
  • 19世紀に実際にあった少年労働の歴史を背景に描かれた名作児童文学
  • アニメ「ロミオと青い空」の原案

子ども大人も読んでほしい名作児童文学を紹介。今回は、リザ・テツナー『黒い兄弟』。

名作アニメ「ロミオの青い空」の原案でもある。

家族と引き離され過酷な労働を強いられる少年たちが団結し、横暴に立ち向かう勇気と友情の物語は、読み手にも大きな勇気を与えてくれる。

過酷な境遇に立ち向かう少年たちの勇気と友情の物語である。物語の背景には、当時イタリアで、実際に、子どもたちを労働力として売買することご行われていた。

本の紹介

1830年代のスイス、頬に傷のある男が、山岳地帯にある小さな村へやってきた。男は貧しい家からお金と引き換えに子どもを買い取りにきたのだった。

ジョルジョも一家の貧しさゆえに、頬に傷のある男に売られる。同じように家族に売られた子供たちとともに海をわたる。たどり着いた先は、イタリア・ミラノ。ここで少年たちは、煙突掃除夫として過酷な労働を強いられるのだった。

厳しい仕事、ひどい仕打ちに耐えながらも、希望をすてず、ジョルジュたちは「黒い兄弟」という秘密結社を作り、力を合わせ、それぞれの故郷に帰るために戦う決意をする。

小さな子どもたちが過酷な労働に耐え忍ぶ姿や、故郷や家族のもとへ帰りたいと願う思いに強く心を打たれる。

物語のテーマにある人身売買や児童労働は現在では法律で固く禁じられているが、当時、実際に横行していた歴史が背景にある。このような時代に育ち、苦難を乗り越えた子供たちがいたことを忘れずにいたい。

現在、家族のことや学校生活の中で、厳しい状況に置かれているという子どもたちにとっても、この物語は、力を与えてくれるものになるはず。

 名作アニメ「ロミオと青い空」原作

1995年フジテレビ系列『世界名作劇場』にてアニメ放送された「ロミオの青い空」の原案。こちらの方がなじみがあるという人も多いかもしれませんね。

私は知らなかったのですが、生徒に聞かれて、「そうなの?」と調べてみたら、その通り。リアルタイム世代のはずの私が知らず、アニメを知っている生徒がすごい!

著者リザ・テツナー

クルト・ヘルトと結婚後、ふたりは物語の語り部としてドイツの子どもたちにおはなしを伝える活動をします。ヘルマン・ヘッセに「現代最高のメルヘンの語り手」と評されました。1933年、ヒトラーがドイツ政権を握ると夫婦でスイスに亡命。『67番地の子どもたち』『黒い兄弟』などを発表。クルト・ヘルトも『赤毛のゾラ』を刊行。

本をチェックする

 東京書籍中学2年生国語教科書でおすすめ本として紹介されました。

『黒い兄弟』は、復刊ドットコムのリクエストにより、2002年にあすなろ書房より新装版が刊行、2021年にも新装版も刊行されています。


単行本: 上巻359ページ、下巻407ページ
出版社: あすなろ書房
発売日: 2002/9/1

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