宮部みゆき『火車』~カードローンの恐怖を描くミステリー

宮部みゆき『火車』
  • 中学生・高校生におすすめ宮部みゆきを代表するベストセラー
  • 「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベスト第1位

本の紹介(あらすじ)

求職中の刑事・本間のともに、遠い親戚である和也が訪ねてきた。婚約者の関根彰子が突然姿を消したのだという。失踪した彰子には秘密があった…。宮部みゆきの代表作ともいえるベストセラーミステリー。

物語の舞台は平成3年。

本から引用するなら、東南アジアから来た女性が日本で働きたいがために日本人男性と偽装結婚するご時勢。

このミステリーの背景にあるのは、クレジットカードローン。

本著にも登場する、クレジットローン破産に詳しい専門家・溝口弁護士は
「クレジットカード破産は、ある意味では公害である」としている。

物語の中で溝口弁護士がお話し下さっている内容を平成24年度版に変換して、お話して頂くと…

「日本クレジット協会が行っている調査によると、回答のあった312社で、平成23年の消費者信用供与額は約59兆円。これは、国家予算規模である(国家予算は約92兆円)。もはや日本経済を支えているともいえる産業である。問題は、カードローン・キャッシングの便利さの一方、それに見合った教育がなされていないことである。」

なるほど、なるほど。

当時の時代背景にバブル崩壊があげられるが、この本に記載されているデータによると、平成元年、消費者信用新規供与額は約57兆円。その金額は平成24年度版とほぼ変わらない。

20年以上前の社会問題を捉えたミステリーだが、いま読んでも決して過去の悲劇とは言えない。スマートフォンの普及により、ネットショップの買い物もより身近になった。ひとりで何枚ものカードをもち、小学生ですらカードショッピングを認識している時代。ネット教育とともに、カードとの付き合い方をしっかり教育する必要もありそうだ。

簡単に作って使える便利さの裏に、カードローンには見えづらい怖さも潜んでいる。ひとまず、この本を読んで、カードローンのシステムやその怖さを疑似体験してみて。
これから社会に出ていく若者たちに、就職祝いにぜひ贈りたいおすすめの1冊。

中学生から読めます。カードローンやキャッシュレスの時代。お金について学ぶことはとても大切です。カードローンの便利さと怖さを知るいい教本になります。

映画・ドラマ化

テレビドラマ「火車」

宮部みゆき原作『火車』は、これまでに2度テレビドラマ化されています。

1994年土曜ワイド劇場版「火車 カード破産の女」

【キャスト】三田村邦彦、財前直美

2011年ドラマスペシャル版

【キャスト】川上隆也、佐々木希ほか高橋一生さんもでてますよ

2011年度版は、平均視聴率17%と高視聴率を獲得。古さを感じさせない現代の普遍的な社会問題テーマを扱ったミステリーとして、これからもドラマ化してほしい作品です。

みんなもカード破産には気を付けてね。

韓国映画「火車」

日本での劇場公開はなく、WOWOWで放送されました。

日本でも2度ドラマ化されていますが、映画化希望なのでこれはうれしい。

本をチェックする

受賞歴
第36回山本周五郎賞受賞
第108回直木賞候補
「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベスト第1位
週刊文春ミステリーベスト10第1位
2008年版までの20年間分のランキングでベスト20に入った作品を対象に行ったアンケートで、王道ミステリーの中から堂々の1位を獲得しました。

文庫: 590ページ
出版社: 新潮社
ISBN-13: 978-4101369181
発売日: 1998/1/30

いまならAudibleで無料で聴けます。

著者プロフィール

宮部みゆき
1960年生まれ、東京都出身。
法律事務所に勤務ののち『我らが隣人の犯罪』でオール読物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
『理由』第120回直木賞受賞、『模倣犯』で第52回芸術選奨文部科学大臣賞受賞など多数の文学賞を受賞のほか、「このミステリーがすごい!」第1位も多数獲得している日本を代表するミステリー作家のひとり。

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