伊吹有喜*なでし子物語

入試問題 | 家族 | 昭和

伊吹有喜の『なでし子物語』は、少し不思議な関係で一緒に暮らすひとつの家族を描いた、あたたかい物語。

ゆっくりと流れる時間のなかで寄り添いあう

1980年、昭和の時代。
父を亡くし母に捨てられ、祖父に引き取られた輝子。まわりと少しうまく関われない輝子は、学校でも居場所がない。
若くして夫を亡くした照子は、この家に来てからも、現実を受け入れることができずに、過去を振り返るように日々を生きている。

この遠藤家に、親父様・龍巳の愛人が生んだ子・立海がやってきた。遠藤家では、幼い男の子を女の子として育てるという古いしきたりがあり、体の弱い立海を丈夫に育てたいという龍巳の希望で、療養を兼ねてこの土地で一緒に暮らすことになったのだ。

立海がやってきて、輝子、照子の日々がゆっくりと変り始める。

耀子と立海、ふたりの子どもたちの無邪気な幼さや、物語として書き留めておかなければ、過ぎ去り忘れ去ってしまうような小さな心の揺れを描く日常がいとおしい。

反面、ひとりぼっちという孤独が影をさす。
だからこそ、ふたりでいる時の家族のようなお互いを思うひたむきさがうれしくて、心を温かくする。

「ドリフ」をみせろと屋根に上って要求する幼い子どもたちとたぶんわたしは同時代の子どもだろう。

なによりも心に響いたのは照子の言葉や感情で、もうおばあちゃん世代の照子の方に気持ちは近いのかもしれない、と苦笑いしつつ読んだ。新婚旅行の夜を思い出すシーンでは、なぜか泣けた。

その瞬間を母親は鮮やかに覚えているのに、日々の重なりのなかで子どもたちは忘れていく。
ほおを寄せて笑ったことを、手をつないで歩いた夜のことを。

そっけない息子の文面が心によみがえる。
何も覚えていないのだろう。そして気づくこともない、不器用な母親たちの思いを。
(中略)
でも、それでいいのかもしれない。
そうでなければきっと――子どもたちは母のもとから巣立てない。(207ページ)

読みながら映画のようにストーリーが流れるのは、作者のもつ力なのだろうな。

ぜひ映画化を希望。
私のスクリーンでは、照子は若かりし日の岩下志摩でございます。
シルクの下着にヒール姿が見たい( *´艸`)
そこは回想シーンだから若手女優さんでもいいのか。

『四十九日のレシピ』とは違ったテンポでいい意味で期待を外されて、静かに流れる時間を味合わせてくれる作品。

おすすめポイント

◇中学生・高校生・大人にもおすすめ

◇家族の物語

◇心があたたまる本

◇国語入試問題に出典
2014年 清泉女学院中学高等学校 中学入試国語出典作品

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