乾ルカ『願いながら、祈りながら』~5人だけの小さな分校の物語

中学生

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なにもない北海道の分校で

だれもが手の中に、キラキラと輝くたくさんの可能性を握りしめている。わたしたちはその中から、好きなものを選ぶ権利があるのだという。
その一方で、わたしたちは選ぶことのできない足かせをはめられている。
生まれる場所、家族、能力、健康。
自分の置かれた状況が、簡単には求める可能性を与えてはくれない。

だからわたしには無理だと諦めてしまうのは言い訳に過ぎず、諦めるか努力するか、わたしたちは自分で道を選ぶことかできるのだ。

北海道のまんなかにまるで奇跡のように、捨て置かれたように残る分校、生田羽中学校生田羽分校。

4人の中学1年生とひとりの中学3年生、全校生徒5人だけの小さな学校。

ここに新任の社会科教諭としてやってきた林先生にとって、ここは自分の求めていた場所とはほど遠く、すぐにやめるつもりだった。

アパートもない、シュレッダーもない、

読みたい本も手に入らない。

この村には、塾も高校もない。

大学進学を見据える高校選択をするならば、村を出てひとり暮らしをするしかない。

ないものばかりのこの環境をうらめしく思っているのは、林先生だけではない。

たったひとりの中学3年生・弥生にはクラスメイトもいなければ、心を許せる友だちもいない。

1年生のみなみでは話し相手に物足りないし、昨年まで分校に通っていた1年先輩の桐子さんは高校生になり、メールの返事もこなくなった。

かといって、本校には同い年の女の子たちがいるが、一緒にいてもつまらない。修学旅行で、弥生は彼女たちとの間に大きな溝を作ってしまう。

田舎の分校の生徒だというだけで嫌な思いを強いられるのだと、弥生は思う。

地元では「神童」と呼ばれ、全国模試でも10位にはいる高い学力をもつ江崎学もまた、塾もないこの村では学力が落ちる一方だという不安を抱えている。

「環境が違うんだ、勉強する環境が……。

こんな田舎にいるって、それだけでハンデだ」

この村が、自分の未来を閉ざすのだと言って学ぶはくちびるを噛み締めた。

どこにいても、簡単にいろんなものが手に入る時代、欲しいものが整っていない環境はゼロではなくマイナスだと感じることもあるだろう。

なにもないこの村は、夜には暗闇だけになる。暗闇だからこそ、きれいに見えるものを知っているだろうか。

ものがあふれすぎていては、本当に大事なものが見つけにくいことがある。なにもないからこそ、輝きはよりきらめく。

悩み、迷いながら道を見つけようとする彼らの物語。

朝読書や受験生にもおすすめ

乾ルカさんの小説は、国語入試問題によく出典されています。

『願いながら、祈りながら』

平成27年度(2015年度)浦和明の星女子中学校の国語入試問題に出典。

『向かい風で飛べ』

2015年【茨城県】【鹿児島県】公立高校国語入試問題に出典。

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