ラルフ・イーザウ『盗まれた記憶の博物館』

ラルフ・イーザウ『盗まれた記憶の博物館』
  • 小学校高学年から中学生におすすめファンタジー
  • ブックステフーダー賞受賞
  • 国語教科書でもおすすめ

あらすじ

オリバーとジェシカはベルリンに住む双子の兄弟。ある日、二人の住む家に警察が押し掛けてきた。
父親のトーマス・ポロックが、博物館で古代の石像を盗んだのだという!!
でもふたりは、トーマス・ポロックなんて名前の人は知らない。父親なのに!?
なんと、ふたりは父親の記憶を失くしていた。
父親を助けるために、オリバーはイシュタル門をくぐり、失われた記憶の国クワシニアに向かうのだが……。
この世界で人々に忘れられたものたちが「失われた記憶」となり、次元を超えた別の場所に囚われている。ファンタジーというジャンルではあるけれど、感覚が近い。
クワシニアには、こちらの世界で人々に忘れられた、実際に存在した(もしくはしただろう)ものがいくつも出てきます。中国の兵馬俑、ナポレオンの外套、ペガサス、ソクラテスの弟子だったエレウキデス……。仲間だったり、的だったりするのですが、この絡みも面白い。
オリバーがいつか失くして忘れてしまっていたある大切なものと出会います。
私にもそんな何かがたくさんあったような気がして、クワシニアに思いを馳せてみたりして。
冒険を楽しむだけじゃなくて、少し切ない気持にもさせてくれるファンタジー。

著者・ラルフ・イーザウ

ファンタジー好きにおすすめしたい作家のひとりラルフ・イーザウ。

『モモ』や『果てしない物語』の作者ミヒャエル・エンデも認める現代ファンタジーの名作家です。

ラルフ・イーザウは、ファンタジー作家にしてはちょっと変わった経歴の持ち主。
コンピュータのソフトウェアの設計の仕事をしながら、無味乾燥なデータの世界から逃避しようと物語を書き始めたのだが、ファンタジーの伝統とコンピュータゲームの興奮を合わせ持つ独特の作風を気に入ったミヒャエル・エンデが自ら出版社に原稿を持ち込んで売り込みに行ったのがデビューきっかけ。

あの『モモ』のミヒャエル・エンデ!?世界に名の知れたファンタジー作家が、新人の小説を出版社に売り込みに行くなんて。ラルフ・イーザウは「エンデに次ぐドイツ・ファンタジーの旗手」と言われているそうですが、エンデ自身が惚れ込んでいるのだから納得です。

またこの作品は、審査員の半数以上が子どもの読者という「ブックステフーダー賞」を受賞。この賞いいですよね。いい本を子どもたちが選ぶ、なぜって読み手は子どもたちだから。こういう賞、日本にはないのかしら?
ファンタジー王国ドイツの子どもたちが選んだベストファンンタジー。

ブックデータ

ブックステフーダー賞受賞

ブックステフーダー賞は、ドイツ児童書界で最も権威のある賞と言われています。審査員の半数は子どもの読者で、受賞作は「その年、子どもに最も愛された本」と言えます。児童文学作家にとって、これほどうれしい賞はありませんね。

ラルフ・イーザウは、『盗まれた記憶の博物館』のほかに『ネシャン・サーガ』『パーラー』でもブックステフーダー賞を受賞しています。

国語教科書でもおすすめ

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