長谷川夕『おにんぎょうさまがた』

こわい | ミステリー | ライト文芸

  • 『僕は君を殺せない』長谷川夕さん2作目。
  • 怖い本が好きな人に
  • さっくり読めるライトノベル

お人形はいつもあなたの傍に。

人形が作られるようになったのは、「歴史」と呼ばれるものが生まれる以前のことだという。

その名の通り、姿形を似せて作られた「ひとがた」には、私たちのさまざまな願いが込めている。雛人形のように子の成長を願い飾られるもの、こけしやリカちゃん人形のように子どもの遊び道具として、かかしやマネキンのように働くための人形もいる。

わたしも幼いころは、リカちゃん人形やジェニーとともに育ってきた。いま手元にあるのは、ブライスドールだけ。

人形の中には、藁人形や人形のように呪いを込めたものや身代わりとなるために生まれる人形もある。あるいは、自分自身にドールを投影させる人も…。

この物語に登場する「おにんぎょうさまがた」は、いったいどのような運命を背負わされ生まれてきたのか、それはわからないが、これは、持つ人に影響を与える特別な力を持った5体の美しい西洋人形たちの物語。

小学二年生のとき、同じ学童に通う香奈枝ちゃんが人形を連れてきた。長い金色の巻き髪に、吸い込まれそうな青いガラス目。黒いワンピースドレスがよく似合っていた。まるでお姫様のように美しい人形ミーナちゃんと、私の出会い。そして、これが事件のはじまりだった。(ミーナは許さない)

事故で亡くなった夫が最期の瞬間に手にしていた人形。こげ茶色の大きな瞳とショートカット、はかなげにほほ笑む「しかけ人形」(サマーはなおらないで)

鮮血のような紅の瞳にプラナリアブロン。あの子は、赤い血の味を求めさせる、渇きをもたらす人形(あくじき少女)

あるものを映し出すことのできる特別な力を持った人形エセル(エセルが映したから)

なめらかな白磁の肌に水色の瞳で、その白磁の肌のように透明に静かに語りかけてくる不思議な人形クローディア(さよならクローディア)

彼女たちの持つ美しさは人を惹きつけ、手にしたものの不安を増長させる。いや、不安を抱えたものほど彼女たちの美しさを欲してしまうのかもしれない。

物語の主人公たちが人形に何かを求めるように、彼女たちもまた人形たちに何かを求められている。そのことに気づかないで、求められるままにある者は戻れない道を選び深みに落ち、ある者は人形に助けられる。

物語を最後まで読めば気づく。

彼女たちもまた、誰かの思いを背負わされるという哀しい運命の中に置かれただけのただの「人形」なのだ。望まれる使命を果たし「生きて」いる。そこに彼女たちの意志はあるのだろうか。それはわからないが。

こわいばかりではない。どこか切なさを感じさせるのは、彼女たちが私たちと同じ「ひと」の形を模して作られているからだろうか。

*もくじ*

ミーナちゃんは許さない

サマーはなおらないで

あくじき少女

エセルが映したから

さよならクローディア

***

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