梨屋アリエ『プラネタリウム』

梨屋アリエ『プラネタリウム』
  • 中学生の女の子におすすめ
  • 朝読書にもおすすめの短編集

甘くて切ない4つの物語

砂糖菓子のようにきれいな表紙がお気に入りの短編小説です。

恋心がつのると空を崩壊させちゃう女の子、翼を隠している男の子など、すこし不思議な人たち織りなす日々をおさめた4編のショート・ストーリー。

非日常は、案外日常にすんなりと溶け込んでいるのかもしれない。

「あおぞらフレーク」… 恋を知らない美野里は、ある日、恋心を募らせた少女がこぼしたかけらを口にする。それは、ほどよく甘くてミルキーで、さわやかな味。かけらをもっと味わいたい美野里は…。

「飛べない翼」… 中学生の中也には秘密がある。背中に翼が生えているのだ。その秘密を、隣に住むフリーターのアニメ好き、三十路女に知られてしまう。砂時計に埋もれちゃう三十路の女に、妙に親近感がわいたりして。砂時計に足をすくわれる前に、みんなも自分の翼をしっかりと広げて。

「水に棲む」… 偶然見つけたセンパイの絵にひと目ぼれしてしまった晴実。センパイと会う回数がふえるごとに恋心がつのるのだが…。センパイは15センチも浮いているし、それに結婚を約束している彼女だっている。報われない恋に泡と消えた人魚姫のような切ない恋の物語。

「つきのこども」…磨布(まふ)は毎夜、部屋を抜け出して衣生(いなり)の部屋へと向かう。逃げ出したい現実があって、それをお互いの存在で支え合っているふたりなのだけど…。こちらも、「水に棲む」のようにラストが切なくって、なんとかしてあげたいよ~、と思っちゃう。

短編のようでいて、別の物語にちらっと登場する人物もいたりして。
どの物語も、何度も読み返したくなるお気に入りです。

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◇続編『プラネタリウムのあとで』では、それぞれの物語に登場した脇役のあの人たちのサイドストーリーが読めます。