池井戸潤 『下町ロケット』~下町の工場から宇宙へ

池井戸潤『下町ロケット』
  • 池井戸潤さんの技術系お仕事小説
  • 宇宙・科学が好きな人に
  • ドラマ原作

本の紹介

かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平は、今は実家の小さな町工場を経営すしている。この小さな工場で生まれた小さなバルブ部品に、JAXAのロケット開発に参入するチャンスがやってくる。日本の最高峰の技術を集結させたロケットの部品に、下町の小さな工場の参入を許すわけにいかないと大企業・帝国重工があの手この手で妨害をしてくる(←大企業なのに、結構小ズルい手を使うんですよ)

私とは何の接点もないはずの、水素エンジンやら宇宙工学やら経済やらビジネスやら男のプライドやら…そう、私には到底理解できないだろう事柄をふんだんに盛り込んでいるはずなのに、気が付いたら佃製作所のペースにハマっている。

大手メーカ帝国重工の落としのテストにズタズタにされた若手社員たちが「佃品質。佃プライド。」のポスターを掲げるシーンでは、思わず涙。男のプライドなんか知るかよ!!という私でらノックアウトされるんだもの、中小企業で頑張ってる社員の皆さんは、こぶしを握って応援したくなるはず。

文中に何度も出てくることば。

「これはビジネスだ」

えぇ、わかってます。

中小企業が大手に屈することなく、プライドと夢を持って真っ向勝負する姿は実に爽快です。

プロローグを読み始めてすぐに、ページをめくる手が止まる。

失敗した( ゚Д゚)
物語のスタートである、ロケット発射の失敗のことではない。

「宇宙科学開発機構主任」とか「一番液体酸素系準備完了」とか「振動数超過」とか「駆動用電池起動」だとか、やけに長い漢字が多く何のことかさっぱりわからない。

(何しろこうしてキーボードを叩くだけで四苦八苦している)

「小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡」のようにロケットエンジン開発のうんぬんなんて本だったら最後まで読めるかしら…なんて少し尻ごみしたものの、サスペンスのようなドキドキの展開にページをめくる手を止められず、あっという間に読み終えてしまいました。

予約待ちで半年以上、2日で読破。
「首を長くして待たされたんだもの、じっくり味わって読もうっと」なんて甘い思惑でした。期待以上におもしろくて一気に読んでしまった。さすが、直木賞受賞作。

ドラマ「下町ロケット」

社会派で爽快感のある池井戸潤さんの小説は、ドラマ化される作品が多いですよね。「半沢直樹」「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」は私が選ぶ池井戸三大ドラマです。どの作品も心揺さぶるドラマ、最後はすっきりさせてくれるところも大事なポイント。

中でも「下町ロケット」は、WOWOWとTBSの両局でドラマ化されています。それほど、この小説が多くの人たちの心をつかむストーリーだといえます。

【TBS版】2015年、2018年放送
【監督】福澤克雄、棚澤孝義
【出演】阿部寛、土屋太鳳、立川談志、安田顕

2016年日本民間放送連盟賞ほか多数受賞。阿部寛さんの人情に厚く、熱い経営者が原作どおりでぴったり。相対する大企業・帝国重工宇宙航空部部長である財前さん役の吉川晃司さんもハマり役でした。JAXA全面協力で、宇宙が好きな人は必見ですよ。

【WOWOW版】
2011年WOWOドラマWで放送
【監督】鈴木浩介、水谷俊之
【キャスト】三上博史、寺島しのぶ、渡部篤郎
TBSドラマが人気ですが、WOWWOの方が先にドラマ化しています。こちらの方が原作に忠実に再現され、より社会派ドラマに仕上がっています。
制作は、民放連賞、ATP賞ともに最優秀賞に輝いた連続ドラマW「空飛ぶタイヤ」のスタッフたち。面白くないわけがない。

本をチェックする

文庫: 496ページ
出版社: 小学館
発売日: 2013/12/21

受賞歴など

第145回(平成23年度上半期) 直木賞受賞作

国語入試問題に出典
【2015年】藤嶺学園藤沢中学校