宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』

宮部みゆき『失われし王国の城』

お気に入りの物語や絵画を眺めながら、この世界に入りこんでみたいと考えたことがある人はいるはず。

わたしも、子どものころは夢中になっていたゲームの世界に入りこめたら楽しいだろうなぁと空想したものだ。RPGやミステリーゲームのファンタジックな物語にわたしは強く惹きつけられた。時々、ぼんやりしては、ゲームの中の登場人物たちの冒険を思い描いていた。ファンタジー小説は苦手だったのに、ゲームの中の物語にはいとも簡単に取り込まれてしまったのである。なんだか不思議。

同じように、物語や絵画、ゲームの中の世界に入りこんでみたい!!という人におすすめしたいのが、宮部みゆきさんの『失われし王国の城』。

本の紹介

中学3年生の尾垣真は、ひょんなことから古城が描かれたデッサンを拾う。彫刻を飾った中央ドームからそびえるふたつの尖塔。立派なバルコニーもある。手前には、城を覆い隠すように森が茂る。

真がその絵に触れると、まるで洗面器の水に顔をつけて、その中をのぞいたような不思議な感覚で絵の中に意識が飛んだ。

その不思議なデッサンは、直接描きこむことで分身(アバター)を送り込むこともできる。絵心のない真は、美術部員でハブられ女子の城田珠子に協力を頼むのだが、山ツバメとして絵の中に入りこんだ真は、城の中にひとりの少女を見つける。

やがて、その少女は10年前に起こったある事件と関りがあることがわかり…。

絵の世界に入りこむという異世界のファンタジーは、ひとりの少女をめぐる悲しい現実世界を突きつける。

城田は言う。

-絵は作者の魂を映すものなんだ

-絵の中に入るってことは、作者の魂のなかに入るってことだよ

飛び込んだ非現実の世界で、彼らが出会ったのは、抗いようのない現実の世界。

それならば、いったい誰が、何の目的で古城のデッサンを描いたのか。

絵の中の城に閉じ込められた少女は何者なのか。

そして彼らは、少女を救うのか。はたまた救わないのか。

少年たちは小さな世界を変えることができるのか。

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出版社 ‏ : ‎ KADOKAWA
発売日 ‏ : ‎ 2018/6/15
文庫 ‏ : ‎ 384ページ

内容(「BOOK」データベースより)

中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!

小学校高学年から読めるファンタジーミステリー。

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