森絵都『宇宙のみなしご』

  • なんだか毎日がつまらない中学2年生の陽子がみつけたおもしろいこと
  • 高学年から中学生におすすめ
  • 野間児童文芸新人賞受賞

あらすじ

学校や毎日が、なんだかつまらない。

そんな風に感じることはないだろうか。

陽子は14歳、衝動的でせっかちな性格。ひとつ年下の弟・リンは、陽子とは正反対のおだやかな性格の弟。子どもの頃のふたりは、自分たちでおもしろいことを見つけて楽しめた。

楽しみにしていた中2の夏休みもあっけなく終わってしまったし、2学期がはじまったら担任だったすみれちゃんは、教師を辞めてインドへ行ってしまった。学校もなんだかすっかりつまらなくなった。なんだかいやになって登校拒否をしたけれど、それも長くは続かなくて、2週間後には学校に行き始めた。

なんだか毎日がつまらない。

陽子は、ある夜、リンととびきりのおもしろいことを見つけた。それは深夜の散歩。それも、屋根の上を歩くのだ。真夜中の屋根のぼりは、陽子とリンの秘密の遊びだったが、やがて、思いがけない仲間が加わって、不思議な夜の散歩が始まる。

まわりと同じように「いま」を楽しめなかったり、夢中になるものが見つけられなかったり、陽子は「みんなとは違う自分」に気づく。その自分をどうしていいのかわからずに悶々とし、なにかを探そうとする姿が前向きにたくましく描かれています。

孤独を恐れず向い合った陽子が最後に手に入れたのは「だれもがひとり」なのだということ。

(本文より)
わたしだって知っていた。いちばんしんどいときはだれでもひとりだと知っていた。だれにもなんとかしてもらえないことが多すぎることを知っていた。だからこそ幼い知恵をふりしぼり、めちゃくちゃでもやりたいようにやってきた。小人たちの足音に耳をすまして、自分もいっしょに走ろうと、走りつづけようと、やってきた。

「いちばんしんどいときはだれでもひとり」

ひとりの孤独を知る人だから、だれかを支えることができる大人になれるのだと、思うのです。

著者プロフィール

森絵都(もりえと)

1968年生まれ、東京都出身。

早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。『カラフル』をはじめ、数々の児童文学を発表。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。

【主な受賞歴】

『リズム』第31回講談社児童文学新人賞

『カラフル』第46回産経児童出版文化賞

『風に舞いあがるビニールシート』第135回直木賞

『みかづき』第12回中央公論文芸賞

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受賞歴など

第33回(1995年)野間児童文芸新人賞受賞

【2018年】かえつ有明中学校国語入試問題に出典