白河 三兎『私を知らないで』

ミステリー | ライト文芸 | 中学生

  • 中学生が主人公のライトミステリー
  • おすすめ文庫王国2013 (本の雑誌増刊)「第1回オリジナル文庫大賞BEST1」

孤高の少女キヨコ

中2の夏の終わり、横浜市のハズレの町へ引っ越してきた「僕」。
転校した学校は「不良とイジメはダサイ」がモットーで、表立ったいじめはない、のだけど。
美しく暗く、大人びて無表情の少女「キヨコ」は、クラスのみんなから無視されている。

なるほど、「キヨコ」は決してイジメられているわけではないのだ。
だれとも交わろうとせず、他人を寄せ付けないのは「キヨコ」の方でもある。

『私を知らないでほしい』という願望なのか、

それとも『私を知ってほしい』という希望の裏返しなのか、

あるいは『私を知らない方が身のため』という警告なのか。

キヨコは、誰にも知られたくない秘密を抱えていた。
転校生の「僕」は、そんな孤高でタフなこの少女「キヨコ」のことが気になって仕方がない。
「僕」の一歩引いた大人びた分析や心配りが余計で、どうにもいけ好かない。

なんて思いつつ読み進めるうちに、「僕」もまた人に明かせない心の傷を抱えていることがわかる。僕はある意味ではキヨコに共鳴していたのかもしれない。
そうすると、これまでの語りすぎる「僕」の心の声もなるほどしっくりくる。

自分を知られたくない。
相手を知りたい。
自分を知って欲しい。

何度も出てくる「嫌い」と「好き」の短い言葉のやりとり。

心に留めておこうとしても、うまく隠しきれずに滲み出てしまう切ない想い。

育つ環境を選ぶことができない子どもたちは不幸なのか。
必要なのはそんな答えじゃなくて、生き抜く強さとしたたかさ。

注:「キヨコ」とは、いつもお弁当がおにぎりだけなので、山下清の女子バージョンからついたあだ名です。本当の名前は、どうぞ本を読んでみてください。

鮮やかなオレンジの表紙、短く心をとらえるタイトル、金原瑞人さんの解説。

読みたくなる要素しかない。