ブライアン・セルズニック『ユゴーの不思議な発明』

  • 子どもから大人まですべての人におすすめ
  • ふだんはあまり本を読まない人にも
  • 2008年コールデコット賞ほか多数受賞
  • 映画『ヒューゴの不思議な発明』原作

ぺらぺらぺらぺら…と本をめくって。
一気に駆け抜けるモノクロのページ。
言葉はない。

鉛筆の細い線で緻密に描かれたイラストの表情に、

ものすごい勢いで引き込まれる。

あらすじ

舞台は、1930年代のパリ。
あぁ、気がつくとわたし、

ユゴーと一緒に駅の中を走り、

壁の裏側に入り込み、

時計の文字盤の奥から玩具やさんを一緒にながめている。

映画のフィルムを切り取ったかのようなイラストは、

それだけでストーリーをもの語る。

イラストにまぎれるように添えられた文章をなぞりながら

心の速度を超えて、物語はスピーディーに進んでいく。

孤児のユゴーは、駅の中を自由に動き回り、大時計のねじ巻きをして暮らしている。ユゴーの心の支えは、亡くなった父が遺した機械人形と修理の手掛かりとなるメモ。壊れた機械人形を直す部品を探していたユゴーは、駅の構内にある玩具やに目をつけるが…。

きっと、あなたもページをめくりながら、

自分の中にストーリーが広がる感覚を味わえるはず。

モデルはジェルジュ・メリエス

おもちゃ屋のおじいさんであるパパ・ジョルジュには実在のモデルがいる。

映画製作者ジョルジュ・メリエス。彼は、世界初の職業映画監督とも言われている。多重露光やストップモーション、SFXなど現在の映画技術にも使われている手法を生み出した映画創成期の技術開発に大きく貢献している。

ファンタジックでいて心に響くのは、この物語がいくつかの実在するエピソードをつないでできでいるからかもしれない。

この分厚い本のもつ魔力は、あっという間に引き込まれて読み終えてしまうところ。

絵本のようでいて

映画のようでいて

モノクロの余韻を残す、不思議な読後感。

イラストが多いので、ふだんあまり本を読まない人にもおすすめです。

そしていつも秀逸な金原さんのあとがきも、ぜひご堪能ください。

おすすめポイント(受賞歴など)

・2008年The コールデコット賞受賞!
・2007年全米図書賞ファイナリスト
・2007年クィル賞(Quill Award) Children’s Chapter / Middle Grade 部門受賞
・2007年度ニューヨークタイムズベストイラスト賞

映画『ヒューゴの不思議な発明』原作

2011年映画劇場公開

【監督】マーティン・スコセッシ

第84回アカデミー賞で11部門にノミネート。高く評価されました。

モノクロとカラー、アナログとCGという全く異なる手法で描かれているようでいて、原作に忠実に描かれたと感じる世界観を感じる。

映画も素晴らしいですが、原作もまた違った感動があります。ぜひ手に取ってみて欲しい。

ブックデータ

ユゴーの不思議な発明
アスペクト
ブライアン・セルズニック/著 金原瑞人/訳