このままだと、俺たち絶滅しちゃうと思わないか?~重松清『ゼツメツ少年』

重松清『ゼツメツ少年』
居場所のない子どもたちに救いの光は届くのか。重松清の毎日出版文化賞受賞。

あらすじ

「だって、同じだろ、俺たち、クジラの祖先と。このままだと、俺たち絶滅しちゃうと思わないか?」

<センセイにお願いがあるのです。僕たちのことを小説にしてくれませんか?>
小説家のセンセイの元にこんな手紙が届いた。

手紙の送り主は、タケシ・リュウ・ジュンの三人。

中学二年生のタケシ、小学五年生の男子リュウと女子のジュン。

「どこにも居場所がない」という三人の物語をセンセイは書き始める。三人は居場所を見つけることができるのだろうか。この物語は、三人を救うことができるのか…。

感想レビュー

学校にも家にも居場所がないなんて悲しすぎる。
こどもたちが「ゼツメツする」しかないと感じるのも無理はない。

だれにとっても、家族は、社会の中で絶対的な自分の居場所であるべき。学校で嫌な思いや辛い思いを抱えてくることはそりゃあ、ある。それでも明日も頑張ってみようと思えるのは、「大丈夫だよ」と支えてくれる家族がいるから。

救いの手を差し伸べたセンセイの選択は、わたしたち大人にとっては絶望的な結末だといえます。居場所のない子どもたちの居場所はやっぱり学校や家族のもとにあって欲しいと願います。

この物語は、同年代の居場所のない子どもたちへのものではなくて、大人のみなさんに読んで欲しい1冊。

おすすめポイント

こんな人におすすめ

小学校高学年から読めますが、中学生、高校生、あるいは子どもたちの傍にいる大人にも読んで欲しい物語です。

これまで重松氏の作品に登場した登場人物たちが、ゼツメツ少年たちを救うべく登場します。気になった物語の、彼らのその後はさりげなく読めるのも、重松ファンにはうれしいところ。この本を読む前に、彼らが登場するおはなしを読んでおくと、違った視点からも楽しめるかもしれません。

受賞歴など

毎日出版文化賞受賞

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。
出版社勤務を経て、1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。学校を舞台に10代の心情を描いた小説も多く、多くの作品が映画化やドラマ化されベストセラーを生み出している。国語入試問題によく出典される作家としても、10代にお薦めしたい作家。
【主な受賞歴】
『ナイフ』坪田丈二郎文学賞受賞
『エイジ』山本周五郎賞受賞
『ビタミンF』直木賞
『十字架』吉川英治文学賞


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