ソン・ウォンピョン『アーモンド』~感情も共感も僕には文字の組み合わせに過ぎない

ソン・ウォンピョン『アーモンド』表紙と本のポップ

わたしにもあなたにも、アーモンドがある。

人は誰でも、頭の中にアーモンドを二つ持っている。アーモンド=「扁桃体」は感情を生み出す体の器官だ。

美味しいおやつをもらってすっごくうれしくなったり、取り置きしておいたおやつをいつの間にか食べられていて悲しくなったりする、心をゆさぶるその感情の源はアーモンドにある。

あ!おやつはアーモンドではないです。

これは、不愛想なふたりの”怪獣”の友情の物語。

運命に翻弄されたふたりの感情が交わり合い、新たな物語がはじまる。

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本の紹介

その日、一人が怪我をし、六人が死んだ。

まず、母さんとばあちゃん。男は最後に自分の胸深くナイフを突き刺した。

僕はそのことのすべてが目の前で繰り広げられるのを、ただ見つめているだけだった。

いつものように、無表情で。

少年の名前はソン・ユンジュ。

その日はユンジュの十六歳の誕生日だった。

ソン・ユンジュは、幼いころからほかの子とは違っていた。ユンジュは笑わない子だった。それだけではない。獰猛な犬も怖がらないし、殴られて死にそうな子を見ても驚かない。検査の結果、ユンジュはアーモンド=扁桃体が小さいおかげで、感情の発達が未熟である失感情症(アレキシサイミア)だった。

だから僕は、周りの人がどうして笑うのか、泣くのかよくわからない。喜びも悲しみも、愛も恐怖も、僕にはほとんど感じられないのだ。感情という単語も、共感という言葉も、僕にはただ実感の伴わない文字の組み合わせに過ぎない。(本文より)

祖母はそんな孫を愛情をこめて”かわいい怪物”と読んだ。

ある年、ユンジュは祖母と母が襲われる凄惨な事件に遭遇する。合同葬儀が行われ、参列者がみな涙を流す中、ユンジュだけはいつもと変わらない。

悲しみや心細さに打ちひしがれる代わりに、ユンジュの中には、答えのない疑問がいくつも浮かんでいた。

あの日、どうして母と祖母は笑っていたのだろう。

男はどうして、あんなことをしたのだろう。

どうして、だれも助けにきてくれなかったのだろう。

ユンジュは感情に基づく行動を理解することができない。だから、その行動にどんな意味があったのかがわからない。

自分は、どんな感情をもったらいいのか。

こんな時、どう感じるべきなのか。

その感情を知りたいと思う。

事件の後、母の経営していた古本屋に立ちながら、ひとり暮らしをはじめたユンジュは、ひょんなことから”怪物”と呼ばれる少年・ゴニと出会う。

感情が欠落しているユンジュと、感情が激しすぎるゴニ。正反対にも見えるふたりだが、ふたりとも不愛想で、足りないものがあって、どうしたらいいか分からない問題を抱えているところがよく似ている。ゴニから感情を学ぼうとするユンジュ、ゴニもまたユンジュと過ごすことで心に変化が表れる。

「僕は世の中をもう少し理解したい」と思ったユンジュと「生まれつき?その言葉、俺は一番ムカつくんだよ」というゴニ。

それにしても、男子の友情ものっていいですよね。

おすすめポイント(受賞歴など)

2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位!
韓国で40万部突破!13ヵ国で翻訳!

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中学生・高校生におすすめしたい1冊です。


アーモンド
祥伝社
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著者:ソン・ウォンピョン 翻訳: 矢島暁子
出版社 ‏ : ‎ 祥伝社
発売日 ‏ : ‎ 2019/7/11
単行本 ‏ : ‎ 267ページ

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