佐原ひかり『ブラザース・ブラジャー』

佐原ひかり「ブラザーズ・ブラジャー」

人を理解するとか、分かり合うとはどういうことなのだろうか。そんなことを日々感じているあなたに(なんにも感じてないあなたにもぜひ)読んで欲しいのがこの本『ブラザース・ブラジャー』である。

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本の紹介

物語の主人公は、ちぐさは高校一年生。父の再婚で、新しい母・瞳子さんと弟・晴彦と暮らすことになった。

晴彦は中学二年生にしては落ち着きがあり、色白で切れ長の目を持つジェンダーレスな印象の男子。

突然一緒に暮らすことになったお年頃の男女という設定に、少女漫画なら胸きゅんの恋愛発展を期待してしまうが、この物語はそうではない。この本のタイトルは『ブラザーズ・ブラジャー』。なんとも奇抜なタイトルである。

ある日、ちぐさは晴彦が自分の部屋でブラジャーを身に付けている姿を目撃してしまう。おっと‼

これが保健の授業で習ったあのLGTB?
もしかして、そういう性癖?

「ファッション!ふつうにおしゃれでやってるんだよ!」

よく見ると、黒いブラジャーには羽のような刺繍が施されていて、とても綺麗だ。ファッションでブラを着けているという晴彦に戸惑いながらも、好きなものを堂々と好きだという晴彦を理解し、受け入れようとするちぐさ。

「理解する」とか「受けれいる」とはどういうことなのか。よく聞くけど、言葉でいうほど簡単なものではない。

薄っぺらい理解は、思いがけない場面に遭遇した時、あっさりと引きはがされる。咄嗟の些細な出来事で、ちぐさは晴彦を怒らせる行動を取ってしまう。(それは物語を読んでください)
ちぐさは晴彦を傷つけてしまったと同時に、自分が本当に守っていたものに気付く。

男の子がブラジャーを着けるのは「ふつうじゃない」とわかっていた。それでも、高圧的な態度で平然を装うことで、これは変なことじゃないんだと自分を守っていた。

ブラジャー姿の晴彦にバツのわるい質問を投げかけたちぐさが、自分について語る場面。わたしたちが「理解している」と思っている行動は、こういうことなんじゃないだろうか。理解を見せるのは相手のためばかりじゃない。

他者を受け入れることは、自分を開くことだ。自分を本当に理解し、受け入れることができない者に、他者を理解し、受け入れるなんてことができるのだろうか。
「わたしは傷つくつもりはないけれど、あなたの傷を見せてごらん、わたしが受け止めてあげるわ」
これってどう?
自分が傷つかない優しさを盾にして、だれかを「理解した」り「受け入れ」たりするって、一方的な関係性だよね。多様性って言葉も、複雑な事情を抱えている人のための言葉じゃなくて、わたしたちひとりひとりがそもそも違うんだってことなんじゃないかな。

わたしも偉そうなことは言えない。ぶつかり合わずに、自分に都合よくだれかに寄り添おうとしてばかりいるのだから。

それでも、自分も傷つく覚悟をもってぶつかり合えば、分かり合えることもある。分かり合えることの可能性は無限大だ。自分を理解してくれる人に出会えない、そんな風に感じている人にもぜひ読んでみて欲しいデス。

柔く、しなやかで、瑞々しい。中学生、高校生にはもちろん、大人にもおすすめです!一気読みでした。映画化希望デス。

本をチェックする

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ブラザーズ・ブラジャー
河出書房新社
佐原ひかり(著)

出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社
発売日 ‏ : ‎ 2021/6/25
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 204ページ

もくじ

ブラザーズ・ブラジャー
ブラザーズ・ブルー

受賞歴など

表題作「ブラザーズ・ブラジャー」は、第2回氷室冴子青春文学賞大賞「きみのゆくえに愛を手を」を加筆・改題したもの。
「相手にラベルをつけて思考停止に陥ることと、作者は全力で戦っている。傷つけない、というズルさに、これほど自覚的な物語を私は他に知らない」――柚木麻子さん激賞!

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