奥野修司『不登校児再生の島』

沖縄県久高島。ここでは、島外から子どもたちを預かる山村留学を行なっている。

ここに来る子の大半は何らかの問題を抱えていて、とりわけ人間関係をうまく結べない子が多い。留学センターの代表・坂本さんはそんな子どもたちを決して”問題児”とは言わない。「まだ地球の生活に慣れていない宇宙人」という。

個性的すぎる彼らが、島で人と関わりながら暮らし、人として成長していく、その過程をシンプルに見つめたノンフィクション。

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レビュー

まずはじめに、子どもたちの不登校の理由も、それに対する家族の考え方や応じ方もそれぞれ。本人がどうしても行きたくない理由があるのなら、無理に通わせる必要はない、と個人的には思う。根本的には家族の問題であり、学校や周りはその思いにできるだけ添ったサポートができれば理想的だと思う。ただ、現実には難しいこともよく知っているつもりである。

子どもたちが、この島へやってきた理由はそれぞれ。

家族と離れて暮らす方がよいからとここに来た子もいるし、テレビでここを知り自ら来た子もいる。悪い仲間との関係を断つためにここに連れてこられた子もいる。引きこもりの長い子どもをなんとか学校に通わせたくて、藁にもすがる思いで引きずるように子どもを連れてきた親もいる。

著者は何度も島に足を運び、少しづつ子どもたちとの会話を重ね、じっくりと成長を見守ってきた。この本では、彼ら自身が語った言葉を中心にその成長が綴られている。

子どもの成長は進んだり、戻ったり、立ち止まったりの繰り返しで、先が見えないような気持になることもあるが、彼らのなかに「変わりたい」という気持ちがあれば、進んでいけるのだと思う。

以下あとがきより。

まるでコマ落としのフィルムを見ているように、彼らは外見から変化していった。さらに時間が経過すると、風変わりな子どもたちは風変わりでなくなってきた。まるで昆虫が脱皮していくような変化は感動的ですらある。
その一方で、子供たちの変身には、子供たちの執念を感じた。
2008年6月、東京秋葉原で加藤智大が起こした無差別事件。この事件を聞いたある子供はこういった。
「ぼくが加藤だったかもしれない」
子どもたちは、加藤と自分に共通するものがあることに気づいたのだろう。そのことを、彼らは恐れていた。だからこそ、なんとしてでも自分を変えたいのだ。

自ら「変わりたい」という思いこそ大人への一歩なのだと改めて気づく。

問題を抱えている子どもたちは、変わりたいという思いを抱えている。しかし、変われない環境の現実がある。この山村留学では、物理的に逃げ道のない環境に身を置くことで、嫌でも人と向き合うことになる。

人は人と関わることで人になる。ここでは、自分を変えるために、面倒でも人と向き合い関わろうとすることができるかどうかが、成長のカギとなる。大事なのは「変わりたい」心に、どう寄り添えるかだと思う。

こうしたサポートは家族では難しいことも多く、誰にでも簡単にできることではないと思う。子どもたちと適度な距離を持ち、サポートする坂本さんに不思議な力があるのだろう。

最後に著者は、センターを運営している坂本さんについて、敬意をこめて”宇宙人”と考察する。確かに、始終つかみどころのない坂本さんは、ここに来る子どもたちに近い雰囲気があるのかもしれない。

以下坂本さんの語りより

オリバー・サックスに『火星の人類学者』という著書があります。この中で、自閉症の人は他人の心が読めない。だから、相手がこういう行動をとったらこうすると、頭の中にインデックスをつくって人とつきあうということが書かれています。ぼくにもそういうところがあります。

わたしにもあります。

坂本さんは学生時代サッカーを通じて人間関係についてたくさん学ぶことができた、もしサッカーをやっていなかったら、今も孤立した人間だったかもしれない、と語る。

坂本さんの言葉に、子どもの頃の自分がじんわりと重なってしまった。これまでずっと理解できず不思議だったことの辻褄が合い、すとんと腑に落ちてしまった。

わたし自身、なにかをひとつ間違えていたら、恐ろしいほど孤独な人生を送っていたのではないかという恐怖が常に背後にある。今があるのは、あのころ、他者とのつながりを断たずにきたことが大きい。というか、それがすべてなのだなと思う。それは、ここに登場する子どもたちが証明してくれている気がする。

本をチェックする

書名:不登校児再生の島
著者名:奥野修司
出版社 : 文藝春秋
発売日 : 2012/4/9
言語 : 日本語
単行本 : 422ページ
ISBN-13 : 978-4163751108

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この本の担当者
ゆう

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