『ヒワとゾウガメ』~大切なものをわすれずにいるということ

安東みきえ・ミロコマチコ『ヒワとゾウガメ』

安東みきえ・さく
ミロコマチコ・え

  • 中学生のよみきかせにもおすすめ絵本
  • 安東みきえ(椋鳩十児童文学賞受賞)×ミロコマチコ(講談社出版文化賞絵本賞受賞)
  • 心に響く胸があたたかくなる
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本の紹介

しまにたったいっとうのゾウガメがいた。
その背中には、いつもいちわのヒワが乗っかっている。
「あたしたちともだちだからいつもいっしょだよ」

ゾウガメは声がない。だからいつもヒワのおしゃべりをただじっと聞いている。

ーねぇ、きみはともだちでいてくれるっていう。
ずっといっしょだって、いつもそういう。
けれど、そんなわけはないじゃないかー

ゾウガメは声にならない心のくらがりで、そんな風にヒワに話しかける。

長生きのゾウガメは知っている。
ヒワがいずれ自分をおいていなくなってしまうことを。
これまでに何羽もの鳥たちをゾウガメは見送ってきたのだろう。
その深い悲しさを、ゾウガメはもうすでに知っている。

それならばいっそ、友だちなどいらない。

のだろうか。

ある日、ヒワが言った。
「うみのむこうに、ゾウっていう生きものがいるんだって。
あんたのなかまじゃないかしら」

じぶんのように長生きしてくれるいきものがいたらどんなにうれしいだろう。

そうしたらもうゾウガメは悲しい思いをしなくてもすむ。

のだろうか。

ともだちのゾウガメのために、ヒワはゾウを探しに出かける。

ヒワがいなくなり、はじめは自由すらかんじていたゾウガメだったが、すぐにヒワのいない日々に落ち着かなくなってくる。

海の彼方にヒワの姿を探す、その目は海の色を滲ませて、寂しさに涙を堪えているようにも見える。

わたしたちは、それぞれに生まれ、決められた命の長さの中で生きている。

その終わりがいつくるのか、だれにもわからない。

ずっと長生きしているゾウガメが小さなヒワよりも先に、いなくなることだってあるのに。

生きることは、悲しみと切り離せない。

たとえ、どんなに悲しみを遠ざけようとしたって、

この先もいくつもの悲しみがすでに準備されているのだ。

悲しみを遠ざけることは、寂しさと隣合わせで、

どちらかを選ばやけれはならないとしたら、

寂しさの方がずっとましだと、

そんな風に思う人もいるだろうが、

いつか悲しみが訪れるその時まで、

だれかと寄り添いながら生きる喜びがある。

「 きみがどんなヒワだったか、ぼくがおぼえていてあげるから。ぼくがひゃくねんわすれずにいるから。」

だれかと過ごした幸せな記憶がゾウガメの心をずっとあたためてくれますように、と祈るばかり。

中学生の読み聞かせにも

中学生(2年生)の教室でよみきかせをしました。
生徒たち、じっくりと聞いてくれました。
友だちについて悩んだり、考えたりする中学生たちの心にも響くものがあるのだろう。
佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』、あべ弘士×石井睦美さんの 『100年たったら』 が好きな人は気に入るはず。

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)
100年たったら

ブックデータ

ヒワとゾウガメ
佼成出版社
¥1,430(2019/11/02 21:26時点)

出版社: 佼成出版社
ISBN-13: 978-4333026487
発売日: 2014/5/1

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