読み聞かせはライフワーク。そんなわたしが、中学生をはじめとする10代におすすめのすいーとびたーで時にスパイシーな絵本を紹介するコーナーです。よみきかせにもおすすめですよ。
今回、取り出した1冊は『ヒワとゾウガメ』。
- 中学生のよみきかせにもおすすめ絵本
- 安東みきえ(椋鳩十児童文学賞受賞)×ミロコマチコ(講談社出版文化賞絵本賞受賞)
- 心に響く胸があたたかくなる
友だちって不思議だ。
同じものが好きだったり、似たようなことを考えてたり、かと思うと、全くちがうから惹かれ合うこともある。ずっと一緒にいることもあれば、ずっと離れていても友だちのまま、変わらないこともある。似ていても、ちがっていても、一緒でも、離れていても”友だち”だなんて不思議だ。
だれもが、そんな友だちに憧れている。
どうしたらそんな友だちができるんだろう。ふしぎだ。
この絵本に出てくる「ヒワ」と「ゾウガメ」はちょっと変わっているけれど、友だちだ。
島にたったいっとうのゾウガメがいた。
その背中には、いつも一羽のヒワが乗っかっている。
「あたしたちともだちだからいつもいっしょだよ」とヒワはいう。
ゾウガメは声がない。だからいつもヒワのおしゃべりをただじっと聞いている。
ーねぇ、きみはともだちでいてくれるっていう。
ずっといっしょだって、いつもそういう。
けれど、そんなわけはないじゃないかー
ゾウガメは声にならない心のくらがりで、そんな風にヒワに話しかける。
長生きのゾウガメは知っている。
ヒワがいずれ自分をおいていなくなってしまうことを。
これまでに何羽もの鳥たちをゾウガメは見送ってきたのだろう。
その深い悲しさを、ゾウガメはもうすでに知っている。
それならばいっそ、友だちなどいらない。(のだろうか。)
ある日、ヒワが言った。
「うみのむこうに、ゾウっていう生きものがいるんだって。
あんたのなかまじゃないかしら」
じぶんのように長生きしてくれるいきものがいたらどんなにうれしいだろう。
そうしたらもう、ゾウガメは悲しい思いをしなくてもすむ。(のだろうか。)
ともだちのゾウガメのために、ヒワはゾウを探しに出かける。
ヒワがいなくなり、はじめは自由すら感じていたゾウガメだったが、すぐにヒワのいない日々に落ち着かなくなってくる。
海の彼方にヒワの姿を探す、その目は海の色を滲ませて、寂しさに涙を堪えているようにも見える。
わたしたちは、それぞれに生まれ、決められた命の長さの中で生きている。
その終わりがいつくるのか、だれにもわからない。
ずっと長生きしているゾウガメが小さなヒワよりも先に、いなくなることだってあるのに。
生きることは、悲しみと切り離せない。
たとえ、どんなに悲しみを遠ざけようとしたって、この先もいくつもの悲しみがすでに準備されているのだ。
悲しみを遠ざけることは、寂しさと隣合わせで、
どちらかを選ばやけれはならないとしたら、
寂しさの方がずっとましだと、
そんな風に思う人もいるだろうが、
いつか悲しみが訪れるその時まで、
だれかと寄り添いながら生きる喜びがある。
「 きみがどんなヒワだったか、ぼくがおぼえていてあげるから。
ぼくがひゃくねんわすれずにいるから。」
だれかと過ごした幸せな記憶はゾウガメの心をずっとあたためてくれるに違いない。
よみきかせメモ
中学生(2年生)の教室でよみきかせ。
生徒たちは、じっくりと聞いてくれました。
友だちについて悩んだり、考えたりする中学生たちの心にも響くものがあるのでしょう。
佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』、あべ弘士×石井睦美さんの 『100年たったら』 が好きな人はこの絵本もきっと気に入るはず。
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出版社: 佼成出版社
発売日: 2014/5/1