東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心』

『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』
  • 小学校高学年から大人まですべての人におすすめ
  • 障がい、福祉に興味がある人に
  • 日本、海外でもベストセラー

東田直樹さんは、自閉症の障がいを持つ中学生。自閉症は、他人とうまくコミュニケーションを取ることができない障がいである。自閉症の治療の難しいところは、本人から直接語ってもらうことができない点にもある。そんなこれまでの定説に鋭く切り込んだのが、東田直樹さんの著書『自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心』。

 自閉症の著者が自ら記す、自閉症のなぞ

自閉症は、他人とうまくコミュニケーションを取ることができない障がい。自閉症には、自分の気持ちを言葉で話したり、指示された行動を取ったりすることが難しいという特徴がある。

3歳で自閉傾向と診断された東田さんは、4歳からパソコンと文字盤を使って文字を綴る訓練を重ね、心の中にある声を文字で伝えることができる。この本のおもしろいところは、東田君が自閉症についてのさまざまな質問に自ら答えてくれるところ。親や専門家ですら理解するのが難しい自閉症の人たちの行動の「なぜ?」を本人が解説してくれる。これ以上の専門書はない。

また、彼の書く文章がわかりやすくておもしろい。そして、とても詩的でユニーク。たとえば、痛みに対する質問のなかでこんなことを言っている。

「僕たちの記憶は、一列に並んだ数字を拾っているわけではありません。ジグゾーパズルのような記憶なのです。ひとつでも合わなければ全体がかみ合わず完成しないように、他のピースが入ってきたことで、今の記憶がバラバラに壊れてしまいます。体が痛いのではないのに、記憶のせいで僕たちは泣き叫ぶのです。」

じっとしていることが苦手で、動き回ったり飛び跳ね回ったりすることに対して「なぜ?」という問いかけには

「自分に縛られ、他人に縛られ、僕たちは籠の中の鳥のように、ピーピー鳴いてバタバタと跳びはねるしかありません。」

言われてみれば私だってそんな時あるよって、自閉症を抱えていない人でも共感できるような思いがそこにある。「話す」ことのできない彼だからこその、惹きつける文章力なのかもしれないなぁ。詩やエッセイ、小説も収録。

読み終えたあとは、自閉症という障がいへのよくわからない不安は薄れ、心が少しあたたかくなる。

 海外でもベストセラーに

2013年7月に発売されたイギリス版「自閉症の僕が跳びはねる理由」は、国際的にも有名な作家、David Mitchell 氏と妻のKeiko Yoshida氏の翻訳ということもあり、イギリスのアマゾンUKでは、発売前からすでに6千部の予約が入っており、ベストセラー・リストでも1位に入る。(オフィシャルサイトより)

また、英訳本「The Reason I Jump: The Inner Voice of a Thirteen-Year-Old Boy with Autism」はNYTimsのベストセラーリストの5位に入ったそう。

「自閉症の僕が跳びはねる理由」日本の少年の書籍が、英国でベストセラーに

東田直樹さん「THE REASON I JUMP」がニューヨークタイムスのベストセラーリスト第5位に!

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東田直樹さんの著書

続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡
あるがままに自閉症です ~東田直樹の見つめる世界~
跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること
自閉症の僕の七転び八起き
風になる―自閉症の僕が生きていく風景
ありがとうは僕の耳にこだまする
この地球(ほし)にすんでいる僕の仲間たちへ―12歳の僕が知っている自閉の世界

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