スティーヴ・ハミルトン『解錠師』~天才金庫破りの切ない恋の物語

『解錠師』
  • 天才的な金庫破りと呼ばれた青年の過去
  • 悲しい生い立ちと切ない恋の物語
  • 全米アレックス賞受賞10代におすすめ海外小説

本の紹介

1990年夏、ある事件から奇跡的に生き残った彼は”奇跡の少年”と呼ばれた。

その事件の悲惨さから、人々は彼を憐れみ、彼の幸せを祈った。

少年はその時、まだ8歳だった。

あの時、少年が見た事件の真相とはどんなものだったのか。

その時、少年はどんな恐怖を感じたのか。

だれもが彼から事件のことを聞きたがったが、少年は口を開こうとはしなかった。

いや、できなかった。

8歳のあの時から、少年は口がきけなくなった。

これは、ある事件と関りをもつ、ひとりの少年の悲しい人生の記録であり、彼のすばらしき恋愛の物語である。

8歳で家も親も失った少年は、伯父のリートに引き取られ育てられた。少年が錠に興味を持ったのは、ほんのささいなきっかけだった。

少年は用なしになった古びた錠を分解し、錠のしくみを知った。

やがてやがて解錠師(ロックアーティスト)と呼ばれる金庫破りの、これがはじまりだった。

少年がのめりこんだのは、鍵を開けることと絵を描くことだった。

心に大きな傷を抱えひとりぼっちだった少年は、

絵を描くことで彼は自分の心を伝え、

鍵を開けることで、彼は自分の心を解放した。

ふたつの才能は、言葉を話さない少年にとって、自分とだれかをつなぐ大切な存在となった。やがて、少年は最愛の人・アメリアと出会い、ふたりは恋に落ちるのだが…。

幸せが近づいたと思った少年に、鍵開けのテクニックを悪用しようとするものが迫っていた…。

はじめて金庫破りをした1999年と叔父に育てられてからの1991年、時間を行ったり来たりしながら、少年が語る物語。
彼が金庫破りをはじめた理由。
犯罪の世界から抜けだすことのできなかったわけ。
物語が語るのは、少年が言葉にしなかったいくつもの思い。

マイクの解錠テクニックのすばらしさ、アメリアとの恋の行方、そして、物語がすすむにつれて見えてくるあの事件。幼いころのトラウマから逃れることのできない苦しさと、お互いに思い合いながらも一緒にいることのできない切ない恋心、さまざまな色を見せてくれるドラマティックな物語です。

受賞歴など

国内、海外のミステリ賞を多数受賞、ノミネートなど、10代から大人までおすすめの切ない青春ミステリー小説。

2011年全米図書館協会が12歳から18歳までのヤングアダルトに特に薦めたい大人向けの本10冊であるアレックス賞受賞
このミステリーがすごい! 2013海外編
週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門第1位
エドガー賞長編賞受賞
アンソニー賞 長編賞、CWAゴールド・ダガー賞、バリー賞 長編賞などノミネート

本をチェックする

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
早川書房
スティーヴ・ハミルトン (著), 越前敏弥 (翻訳)

文庫: 571ページ
出版社: 早川書房
発売日: 2012/12/9

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