福田隆浩『この素晴らしき世界に生まれて』

  • おすすめ:小学生・中学生向け
  • 聾学校教諭だった著者が描く
  • 第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞受賞

本を読むことの一番の醍醐味は本の世界を楽しむことだが、時には読者に楽しみを与えるだけではなく、人を励ましたり勇気づけてくれる本がある。この物語も、そんな本。

里美は、聾学校に通う小学6年生。
補聴器なしではほとんど音を聞き取ることができない。
県立の図書館で放課後の時間を過ごしていた里美は、ある日、一冊の古い本と出会う。
『死の谷の王女』というタイトルのその本は、ひらくとかすかにバラの香りがして、里美の心をひきつけた。耳が不自由だったという著者が書いたその本を、里美はどうしても欲しくなり、デイバックにしのばせてしまう。

里見は耳の障害のことで、いくつもの悩みを抱えている。これからの進路のことー聾学校の中等部へ進むのかそれとも中学校へ進むのかー、自分だけが耳が不自由なことで感じる家族との隔たり。1冊の本とそれを通して出会った老婆と交流の中で、里見は自分がどうしたいのか見つめていく。

障害の有無にかかわらず、まわりの人や家族には簡単に相談できない悩みをかかえている人はたくさんいると思う。 里美が『死の谷の王女』という本に励まされながら成長していくように、この本が誰かを励まして、勇気づけてくれるんじゃないかと思う。自分を変える力は、きっと自分の中にあるはず。

この本の著者・福田隆浩さんは、障害児教育にも携わってきた方。この本の執筆当時は、聾学校の教諭をしていました。障害のことで悩みを抱えている子どもたちの心に近いところで書かれたのだろうと思う。

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著者:福田隆浩
出版社: 小峰書店
行本: 143ページ
発売日: 2004/1/1

障がいのある人、悩みを抱えている人にも。

受賞歴など
第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞受賞

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