青山美智子『お探し物は図書室まで』〜有能な司書は人生のヒントを見つける能力がある

本が読みたいと思った時、あなたはどこに行く?書店?学校図書館?公共図書館もある。最近では、本のあるところへわざわざ出かけなくても、スマホがあれば、本探しも購入もできるから、まぁ、それも悪くない。

そんな人にも、ぜひ一度、図書館の活用をおすすめしたい。

図書館の推しポイントは、無理に読まなくてもよいところにある。読むつもりのない本や興味のない(と思っている)ジャンルの本を手に取り、読める。その本が思いがけない発見をもたらしてくれることは少なくない。

それから図書館には司書がいる。図書館に「レファレンスコーナー」があるのを知っている人はかなりの通といえる。私は図書館のヘビーユーザーだが、自分が図書館で働くまで、レファレンスという概念を知らなかった。

レファレンスコーナーでは、「こんな本を探しています」とか「こんなことを調べたい」という相談に、司書が対応してくれる。

実のところ、利用者自身が探しているものを的確にとらえている、とは限らない。(これは、実際にカウンターに立った経験から言える)利用者によくよく話を聞いていくと、知りたい内容は、別の本の中にありそうだ、ということはよくある。

有能な司書には、本人も気づいていない「探し物」を手渡してくれる能力があるのだ。

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本の紹介

小学校に併設された町のコミュニティハウス。ここでは、パソコン教室や囲碁教室、将棋、リトミック、フラダンスなどの講座や催しが行われている。産直なんかもある。物語の主人公たちは、ひょんなことからコミュニティハウスの図書室に立ち寄る。

「何をお探し?」

優しく、どっしりとした安定感のある声。親切でもなく、明るくもない。あるものは、その声に、ふわん、と体を包まれたような気がした。いつくしみに満ちていた、とも語る。懐の深さを感じられると語ったものもいる。

そのひと言に「はて、わたしの探しているものはなんだろう」と立ち止まる。

仕事をする目的?

もてあましている夢の置き場?

育児に必要な「余裕」とやら?←これマジでどこにあるの?

居場所、人生の在り方?

どっしりとして、いつくしみ深く、思いがけず優しい声の持ち主(利用者談)は、レファレンスコーナーに座り、丸めた毛玉を一心不乱にぐさぐさ刺している。

彼女こそ、このコミュニティハウスの図書室に勤務する敏腕司書・小町さゆり。

人生に必要なににかは図書室で見つかるのだろうか。小町さゆりが彼らに手渡したのは、ただの本ではない。

懐かしさ、優しさ、あたたかさ、出会い、きっかけ、

本には人生を豊かにするヒントがかくれている。そう、有能な司書には、あなたが探している「人生を豊かにするヒント」を見つける能力がある。

いま何かを探している、あるいは、探し物がわからないという人に、ぜひおすすめしたい。もしかしたら、この本がヒントをくれるかもしれない。

おすすめポイント(受賞歴など)

高校生の朝読書におすすめしたい、心あたたまる連作短編集。2022年、国公立高校国語入試問題にも採用されました。

コミュニティハウスの小さな図書室を舞台にした、司書の仕事ぶりがうかがえる物語。図書館や本に関わる仕事に興味がある人、本が好きな人には特におすすめ。

本の装丁にも本好きの心をくすぐる仕掛けがある。本の背は濃紺の製本テープの風合いをし、下部に請求記号のラベルがついている。よく見ると一般的なの図書館ラベルよりも位置が低く、これは、図書館がラベルを貼ったときに、ポプラ社の文字が見えるように設定されているんじゃないかな、と思う。

物語の舞台となっている「図書室」が気になった人は、図書館との違いを調べてみるのもおもしろいかも。ちなみに、「図書室」と「図書館」の違いを分かりやすく解釈したとんちんかんな役に立たないウェブサイトをいくつか見つけたので、ネットで調べる時はご注意を。どうやって調べたらいいの?という方は、早速、図書館のレファレンスコーナーに声をかけてみるのもよいかもね。

受賞歴

2021年本屋大賞第二位

本をチェックする

お探し物は図書室まで
ポプラ社
青山 美智子 (著)

出版社 ‏ : ‎ ポプラ社
発売日 ‏ : ‎ 2020/11/11
単行本 ‏ : ‎ 300ページ

【もくじ】
朋香 二十一歳 婦人服販売員
諒 三十五歳 家具メーカー経理部
夏美 四十歳 元雑誌編集者
浩弥 三十歳 ニート
正雄 六十五歳 定年退職

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