石井里津子『千年の田んぼ ~国境の島に、古代の謎を追いかけて』

千年の田んぼ
  • 山口県の離島に残る日本最古の田園の秘密に迫る
  • 【社会】食文化と歴史を知るノンフィクション
  • 【2018年】第64回全国読書感想文課題図書・中学生の部

小さな島に広がる八丁八反の田園風景

山口県萩市。朝鮮半島との国境に近い日本海に浮かぶ、ウシの形をした小さな島・貝島があります。

この島に「八丁八反」と呼ばれている、小さな島には大きすぎるほどの田園地帯が広がっています。きれいに整えられた田んぼのわきには、小さなため池がいくつも点在しています。

その数は200個以上!

さて、みなさんは毎日お米を食べていますか?

そのお米が田んぼから採れるというのは知っていると思いますが、お米づくりに欠かせない最も大切なものは何だか知っていますか?

水です!

実は、この貝島には大きな山がなく、川がひとつもありません。

人々はお米作りに欠かせない水をどのように確保していたのでしょうか。

その秘密を握るのが、たくさんのため池です。

このため池には、大変な工夫が隠されていました。

水源の乏しい小さな島での米作りの不思議だけでなく、この「八丁八反」には歴史を解き明かす大きな謎が隠されていたのです。

いったい、いつ、だれが、どんな目的で作ったものなのか。

「八丁八反」のはじまりを調べるうちに、その謎は7世紀後半からの律令時代にまでさかのぼることがわかりました。

千年前の先人たちが、この土地に託した思いとはどんなものだったのでしょうか。

千年ものあいだ、変らない米作りを守り支え続けてきた人々の知恵と工夫、そして現在も続けている人々の努力と思いに迫ります。

歴史・農業が好きな人に

『千年の田んぼ ~国境の島に、古代の謎を追いかけて』は、山口県にある小さな島・貝島に今も残る「八丁八反」と呼ばれている田園地帯の米作りや歴史の秘密に迫るノンフィクションです。歴史が好きな人農業・食文化に関心がある人に特におすすめです。

歴史ノンフィクションとしてとても興味深く、たくさんの中学生に読んで欲しい1冊です。

読書感想文・課題図書

第64回(2018年)全国青少年読書感想文コンクールの課題図書(中学生の部)です。読書感想文が書きやすいかどうか、という視点で読むと、あまり興味のない人には書きやすいとは言えないかもしれませんね。新しい発見もあり興味深く読みましたが、中学生が自分なりの感想を書くのは難しいかもしれない。無理に書こうとすると、あらすじだけ書いて終わてしまうパターンにもなりそうです。感じたことをそのまま書くというよりも、レポートに近い感想文がたくさん出てきそうかな。

逆に、歴史や農業が身近な人、興味のある人であれば、千年前の歴史を証明する風景がそのままに残されることのすごさやそれを維持することの大変さに感動があるはず。「八丁八反」は歴史的な価値や農業の歴史を伝えるだけではなくて、大きなロマンを感じる風景だと思うのです。本の表紙で「八丁八反」の景色を眺めている3人はいったいだれなのか。

千年もの時間が流れるあいだにいくつもの時代の幾人もの人々がながめただろうこの景色を、その時代の人々になったつもりで、感想を書いてみるというのもおもしろいかもしれません。よかったら挑戦してみてね。

一日でも読み終えることができます。

ブックデータ

単行本: 192ページ
出版社: 旬報社
ISBN-13: 978-4845115198
発売日: 2017/12/1

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