青崎有吾『早朝始発の殺風景』~青春は、気まずさでできた密室なんだ

青崎有吾『早朝始発の殺風景』表紙と POP

人間は、本当に意味のない行動なんてしないものだ。無意識にも意識は内在し、なにかしらの答えがある。

まっすぐに尋ねたら、素直に真実を答えてくれるだろうか。君が教えてくれない秘密を知りたくて、少しずつ、探るように会話を交わす。秘密を分け合うために、ぼくたちはもう少し近くなる必要がありそうだ。微妙な距離感が生み出す青春ライトミステリー。

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本の紹介とレビュー

5時35分発、下りの始発電車。そこにいたのはクラスメイトの殺風景。

電車の中で微妙な知り合いに出会ってしまった時ほど気まずい瞬間はない。辛うじて苗字はわかるが名前は知らない、話したこともないクラスメイト・殺風景とガラガラに空いている電車で乗り合わせてしまった加藤木。しかも始発の車内でふたりきり。目が合ったあとでは、無視するのも気が引ける。

こんな早朝に、どこへ行くのか?

いったい、なんの目的で?

加藤木と殺風景は、お互いに、相手が早朝の始発電車に乗っている理由を探りはじめる。

「夢の国には観覧車がない」の舞台は、幕張ソレイユランド。フォークソング部の追い出し会で、先輩と後輩くん。なぜ俺たちは、ふたりで観覧車になど乗っているのか。

「三月四日、午後二時半の密室」では、風邪で卒業式を休んだクラスメイトの煤木戸さんの自宅へ卒業アルバムを届けに行くことに。アルバムを渡してすぐ帰るつもりが、なぜか、部屋に案内されてしまう。

微妙な距離感は、よく知らない人だけではない。「メロンソーダ・ファクトリー」は、放課後、いつものファミレスにいつものメンバーで集まる女子高生3人組。「捨て猫と兄妹喧嘩」は、両親の離婚で離れて暮らしている妹と兄。

気まずさの裏には、知られたくない秘密をもつ後ろめたさが隠れている。

気づかなかったふりをして、やり過ごすこともできるけれど、それでは少し寂しい。

物語の登場人物たちの小さな秘密に、あなたは気づくだろうか。

気まずさの先にある小さな謎が解けた時、お互いが少し近くなるはず。分け合えたら、その距離はきっと変わっていくね。

わたしたちは、ひとりひとり閉鎖された密室の中にいる。ドアを開ければ、だれかを招き入れたり、だれかの元を訪れることもできる。まずはドアを開ける勇気が必要だ。気まずさのドアを蹴飛ばして、だれかとほんの少し心を交わす、忘れ得ないかけがえのない時間をこの本で楽しんでみて。

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中学生、高校生の朝読書にもおすすめ!

出版社 ‏ : ‎ 集英社
発売日 ‏ : ‎ 2019/1/4
単行本 ‏ : ‎ 208ページ

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