- 小学校高学年から中学生向け
- 困ったママに手を焼いている人に
- ガーディアン賞受賞作
ママは特別な存在
子どもにとってママは特別な存在。
ママだってむかしは子どもだったはずなのに、どうしてそのことを簡単にわすれちゃうんだろう。
マーガレットは、スターとドルフィンのママ。オレンジのロングウェーブに緑色の目、そして全身には色とりどりのタトゥー。お酒とパーティーが大好きで、仕事はしてないみたい。落ち込んだかと思うと、急に陽気でハイテンションになったり、たまにおかしくなったりする。クラスメイトのママたちとはちょっと違うけれど、そんなマーガレットのことがドルフィンは大好き。
でも最近、お姉ちゃんのスターはママのことが好きじゃないみたい。楽しかったはずの3人の生活が少しづつ変わり始めて……。
とにかくママが大すき♪なドルフィンの目線で毎日の生活は楽しく陽気に描かれるが、心のバランスを崩してしまったママ・マリーゴールドと子どもたちとの生活は、深刻な状況に置かれている。
マリーゴールドの姉・スターは、そんなママを客観的に捉えている。
ある夜、マリーゴールドは、スターの父親に会えるかもしれないと言ってコンサートに出かけるが、その時の、スターはドルフィンにこんな風に語る。
「十二時まえに帰る、だって。スターはつぶやいた。「まるでシンデレラきどり。ろくでもない王子さまをさがしてね。」
それから、父親に会いたくないの?と尋ねるドルフィンにスターはこう答える。
「なんて父親なの、とはいってやりたいけどね。マリーゴールドをすてて、おかしくさせちゃって。」スターはことばを切った。
「マリーゴールドはほんとに頭がへんだよ。」
「そこまでへんじゃないよ。だって、べつにおかしいようには見えないし、声がきこえたりするわけじゃないし、自分をポカホンタスだとかダイアナ妃だとも思ってないよ。いろんなことを想像するのが得意なだけで。」
「お金を持っていないのに、たくさんつかうのも得意よね。飲んだくれるのも得意。とんでもないことを思いつくのも得意。あんたに自分のことを『すばらしいオカアチャマ』だと思わせるのも得意。」
「そりゃそうだけど、マリーゴールドはやっぱりスターのことがいちばん好きなんだよ。いまみたいにひどい態度をとってたって。私たちの両方を同じように愛してるけど、お姉ちゃんは特別なの、ミッキーの子どもだから。わたしもミッキーのこどもだったらよかった。マリーゴールドは、わたしのお父さんのことはなんにも話してくれない。思いだしもしないみたい。記念のタトゥーさえ、彫ってないんだもん。」
ママが大好きだけれどどうしていいかわからない気持ち、自分がママ(誰か)にとって大切な存在でありたいと思う気持ち、それから自分を見失いそうになってどうしていいかわからないマーガレットのようなママの気持ち、いろんな気持ちが見えて切ない。さらりと読めて、切なさがせまる物語。
それぞれの章のタイトルが、マーガレットの体に刻まれたタトゥーの名前になっているのも面白い。クロス・ハート・魔術師・カエル、などなど・・・。最初のページにマーガレットの全身タトゥー図のイラストがあるので、チェックしながら読んでみて。
受賞歴など
ジャクリーン ウィルソンのガーディアン賞受賞作。
著者のジャクリーンン・ウィルソンは、70冊もの作品を出版している人気の児童文学作家さん。数ある作品の中でも、この作品が一番のお気に入りだそう。私も心に残る作品。
本をチェックする
出版社 : 偕成社
発売日 : 2004/8/1
単行本 : 342ページ