【児童文学作家・濱野京子】小中学生におすすめしたい本はこれ!

濱野京子おすすめの本

小学校高学年から中学生向け、濱野京子さんのおすすめ本を紹介します。

トーキョー・クロスロード

壁に貼った山手線の地図にダーツをして、当たった駅で降りて、町を散策する。それが、栞の休日の過ごし方。メガネにゆるゆるの恰好に変装して、いつもの自分とは違う自分で、知らない町を気ままに歩く。ある日、ふと心ひかれた背中にカメラを向けると、それは、かつて同級生だった月島耕也だった。第25回坪田譲治文学賞受賞

みんなの前にいるしっかりものの自分、変装して気ままを楽しむ自分、素直じゃない自分、うまくつかめない自分を持て余してる苛立ちや不安。うまく表に出せない月島への秘めた思いと止められない感情、その恋心にブレーキをかけようとする心の葛藤が、痛くなるほどに切ない恋愛小説。少しだけ違う自分になりたい、という女の子におすすめ。

レガッタ!水をつかむ

「たかがスポーツに、そんなにむきになるなんて」。優秀な姉の言葉に反発し、強豪ボート部に入部した飯塚有里は、力がありながらも、水上でうまく発揮できずにいた。ボートはひとりでは漕げないと知ったとき、オールが水をつかみはじめる…。

ことづて屋

「お言伝てを預かっています」山門津多恵の頭には時折、死者からの伝言がひびいてくる。宛てた人物にその言葉を伝えるまで、津多恵は楽になれない。見ず知らずの人物を訪ねるために外見を装うのを、美容師の恵介が手助けしている。幼くして死んだ娘から母親へ、放蕩息子から父親へ、少年院の中から親友へ…。伝えられた言葉は残された人に何をもたらすのか。痛みをかええた心をほぐす、あたたかくやさしい物語。

木工少女

都会育ちの小学6年生の美楽(みらく)が、父親の転勤でコンビニもない田舎に引っ越してきた。最初は、こんなところでは暮らせないと思う美楽だけれど、「明野工房」を営む木工職人のデンさんと出会い、木のぬくもりに触れ木工に目覚めていく。

自然のくらしに憧れている人や、美楽のように田舎の暮らしは想像できないなぁという人に読んでみて欲しいです。小学校高学年向け。

ヘヴンリープレイス

引っ越した夏休み。中学受験を控えて、壁にぶつかっている小6の和希(かずき)だが、新しい町で見つけた雑木林で、天使のように笑顔のかわいい男の子・英太に会った。英太と仲良くなったぼくは、英太が「うち」と呼ぶその場所を訪れるが、そこは雑木林の奥にある荒れて朽ちかけた廃屋だった…。

「自分」と「自分が求められていること」の間での葛藤。自分で乗り越えられる悩みにぶつかる子は恵まれている。すべてがハッピーエンドとはいかないラストが、自分で乗り越えられない環境にぶち当たっている子どもたちを、社会はどうサポートすべきなのか、という問題も投げかけている。濱野さんの作品にはいつも心をつかまれますが、こちらの作品もすごく良かった。「夏の庭」を思わせる児童書です。

その角を曲がれば

本が好きな杏、バドミントン部のエース・樹里、甘えっ子キャラの美香。
クラスでは“仲良し3人組”だけど、ときどきお互いの気落ちが読めないときがある。受験、恋、家族、友情……三者三様の思いを抱いて過ごす、中学生活の一年を描く。

友だちだから、理解したいし、理解してほしい。自分のことを大切に思ってほしいし、秘密を打ち明けてほしい。友情の中で、知らずに傷つけあったり、悩んだり、何かを選んだりして「自分」を探しながら成長する、そのバランスが絶妙で、まるで恋愛小説を読んでいるかのように切なく、軽い息苦しささえ覚える。

石を抱くエイリアン

2011年3月、中学3年生だった彼らの物語。当たり前に続くと思われた毎日が、当たり前ではないと、多くの人が知ったこの日を忘れない。