読み聞かせはライフワーク。そんなわたしが、中学生をはじめとする10代によみきかせしたい少しビターな絵本を紹介するコーナーです。
今回、取り出した1冊は『ヤクーバとライオン』。
- 10代に読んでほしい絵本
- ライオンと青年
- 本当の勇気とはなにか
勇気とはなんだろう。
勇気とは、恐怖を克服し、目の前の試練にひるまずに立ち向かうことだと、幼いころのわたしは考えていた。
細くて弱虫だった幼いころのわたしにとって、勇気とは、いつも吠える怖い犬がいる道を泣かずに堂々と歩いて行くことだった。
あるいはもっと勇気があれば、その犬に向かって大声で怒鳴りかえしてやれるのに、と思っていた。
「うるさ~い」と怒鳴るわたしの声に怯んだ犬の横を何食わぬ顔で通り抜ける自分の姿を想像する。クラスメイトたちはわたしを見直すにちがいない。そうしたら「わたしは泣き虫じゃない」と言い返す勇気も持てるはずだ。
それができたらどんなに自分が誇らしいだろう。
あのころのわたしは、そんな「勇気」が欲しいと思っていた。
しかし、この絵本のなかでヤクーバが選んだ「勇気」は、幼いころにわたしが欲しいと願っていた「勇気」とは違う。
勇気には、いろいろある。
いのちがけで何かを守る。
弱いものを救う。
勇気は称賛に値する。通常は、そう考える。
しかし、ヤクーバが示した勇気は逆だ。
一晩じっくりと考えてヤクーバが選んだ答えは、称賛と名誉を手に入れるために、他者を傷つけることはできない、ということだった。ヤクーバは仲間からの疎外や軽蔑を承知で、人間としての気高さを選んだのだ。
気高き選択と引き換えに、ヤクーバは集団生活の中で生きづらさを抱えることになるだろう。
こうした勇気を、わたしは持てるだろうか。あなたはどうだろうか。
この短くシンプルな絵本は、重く問いかける。
あらすじ
アフリカのおくちにある小さな村で祭りのじゅんびがはじまっていた。
今日は、少年たちが戦士になるお祝いの日なのだ。
ライオンとひとりでたたかい、たおすこと。
それが、戦士に求められる「勇気」だった。
夜になり、ライオンを待ち伏せするヤクーバの前に一匹の傷ついたライオンが姿を現した。
ライオンはヤクーバに語りかけた。
「おまえには、二つの道がある」
イオンを殺し、戦士と称えられる道。
もうひとつは、ライオンを殺さずに気高い人間となる道。
しかし、それは戦士としての道を捨てることになる。
「どちらの道をえらぶか、それはおまえが考えることだ」
夜明けがせまり、ヤクーバはひとつの道をえらぶ。
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単行本: 36ページ
出版社: 講談社 (2008/3/28)
ISBN-13: 978-4062830126
発売日: 2008/3/28

勇気について考えさせられる絵本は、高学年・中学生へのよみきかせにもおすすめです。
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